D社は、社長自らが職人肌であることから経営管理が疎かになってしまい、結果的に現場の整備士と事務員(経理スタッフ)の意思疎通がうまく図れないといったしわ寄せに悩んでいました。その影響として、具体的には請求書の発行が遅れる等の問題が顕著化していました。
社長様自身が二代目のスペシャリストメカニック(職人肌整備士)で、経営や経営管理に タッチしようとしないので、社長様のご親族から社長としての自覚をもたせて欲しい、親族同士の会話は感情剥き出しの喧嘩ばかりで聞いてくれないのでどうにか助けて欲しいと いうのが最初のご相談のきっかけです。
工具を手放し、経営会議を実行
このような状況は、日本の中小企業全体に多数蔓延している課題・難題だと思いつつ、社長自身の意識あるいは、トップの意識さえ変わればとても伸びしろのある会社だと期待しながらサポートをすることとなりました。社長様は、オーナーとしての権限は持ちつつもご自分の気質・性格を理解してもらい、雇われ工場長を育てるという選択肢も視野に入れていました。
当事務所のサポートの第一歩としては、社長様が他人の支配下に収まるのは本望ではないという意思を確認した上で、社長という認識を本人に持っていただくという意識改革からスタートしなければいけないと思いました。
そこで、社長様本人にその気があるかを尋ね、やる気は十分あるということだったので、まずスパナーなどの工具を握らない状態で経営会議という場の設定のご提案をいたしました。その後、「何をやっていいかも分からない」ということだったので社外経営スタッフ主導での会議進行のご提案をいたしました。
右手にスタッフ、左手にスパナーをスローガンに!
サポートの第一歩としては、まず、社長の経営者としての意識を強化する目的で、経営会議をキックオフし、「社長は右手にスタッフ、左手にスパナー」をスローガンとして開始し、月2回程度社内スタッフとの親睦も兼ねて会議のサポートを行うことにしました。
その後、腕と性格のよい整備士が入社したお陰でその方を工場長とし、社長には出来るだけ営業に専念していただき、工場全体を俯瞰してもらう意識付け、車検や整備記録から車両販売へ繋げる導線の洗い出しをしていただくところまで導きました。
社長のみならず整備士全員の意識も変わる!
一連のサポートを続けることで、社長だけではなく整備士全員が単価(レバレート工賃)×数量(工数=時間×人数)を意識するようになり、結果的に請求書作成依頼もすぐに事務員に報告するようになりました。
また、損益分岐点売上高の把握や翌月の車検一覧を出力できるような体制が整っている ことから、一覧に載っている見込み客に対してどのようなアクションをとったか確認するようになりました。
今後は、残業を減らすと整備売上が減るという悪循環に対して①レバレート工賃を上げる(客質を上げる)、②下取り車・販売車の見積もりを誰でもできるような体制にし(自動化)、車両販売を強化する予定です。
また、突発的に入る粗利のよい仕事が多いタイミングを見極め、その付近のスケジュールに余裕を持たせるような体制構築へ向け、より精緻な顧客分析など更なるサポートの重点を置く予定です。