我々中小企業にとって銀行との良好な関係構築は重要な経営対策の一つである。そのためには時代とともに変化する銀行の事情を知る必要がある。近年、銀行を取り巻く環境は以下のように大きな変化をしている。
- メガバンクの誕生…バブルが崩壊し、金融ビッグバンが進められた結果、大手都銀は経営合理化を目指し合併を進めた。
- 規制緩和の進展…銀行/証券/信託銀行/保険の業態間の総合参入、投資信託の銀行窓口販売の解禁、金融持株会社の解禁、銀行業務への新規参入などが認められ進められてきた。
- 不良債権処理の進展…金融庁の指導のもと不良債権処理のルール化が行われ、厳格な企業の格付けによりメガバンクについてはほぼ不良債権処理は完了しているといわれる。地銀、第二地銀については地域の老舗企業との関係等により不良債権処理は遅れているようである。
- 政府系金融機関の改革…巨大民間銀行である郵便貯金銀行をはじめ日本政策金融公庫(国民生活金融公庫/中小企業金融公庫等の統合)の発足、商工中金の民営化
以上のような環境変化によって銀行を取り巻く経営環境は競争激化の様相はますます強くなり、銀行は経営合理化を図り、組織の再編、業務の効率化を進め、収益構造も次のように変えつつある。
・手数料自由化・金利ビジネスからフィービジネスへ・ビジネスマッチングの強化・事業承継対応強化、M&Aの紹介・新商品開発(ビジネスローン、預金連動型住宅ローン等)
地銀、第二地銀はメガバンクとの差別化を図ることを目指し、メガバンクが業務効率化の観点からあまり相手にしないような中堅・中小企業をメインターゲットとすることが考えられる。
銀行員の仕事の環境は、合理化による銀行員一人当たりの仕事量の増加、規制緩和による取り扱い金融商品の増加、個人情報保護法、金融商品取引法等のコンプライアンス強化への対応等により顧客の状況を今までのように細かく見ていられなくなってきている。
以上の銀行事情から我々は銀行との良好な関係を築く上で次のような対応が考えられる。
- 自社の規模に合った銀行を選択する
- 投資信託等の多様化した銀行商品の知識習得に努める
- 銀行は取引ルールが確立されてきており、特に企業の格付けの中心は決算書分析であるので決算書に関心を持った計数管理経営が必要となってきている
- 銀行員の仕事量が増加しているので我々は自社のことを簡潔かつ詳細にわかってもらう「説明責任」を果たす努力が必要である
(廣島 清量)