今年も年末が迫ってまいりました。ねじれ国会の影響で成立の遅れた平成20年度税制改正では、個人の所得税に関しては特に大きな改正はなく、平成21年度以降に見送られることとなりました。今号は、年内にまだ間に合う個人の所得税関係の一般的な税務対策をまとめましたので、実行検討してみてはいかがでしょうか。
1.株式・不動産の売却益対策
株式(公募株式投資信託を含む)や不動産の売却益が既に確定している場合で、含み損のある株式等や不動産を保有している場合、それらを売却し、売却損を出すことで、売却益と売却損の内部通算が可能です(ただし、同一所得内の通算に限られます)。
2.ゴルフ会員権の含み損対策(詳細は10月22日号参照)
売却可能なゴルフ会員権で含み損がある場合、そのゴルフ会員権の売却損は、給与所得や事業所得や不動産所得など他の所得と損益通算することが可能です(ただし、ゴルフ場経営法人が破産した場合など損益通算できない場合があります)。会員権には株式形態と保証金形態があり、後者の保証金形態の場合、退会あるいは入会後の一定期間の据え置き後に要求すれば契約上は保証金が返金されるので迂闊な売却には注意が必要です。
3.上場株式等の譲渡所得等に関する課税の動向(詳細は11月12日号参照)
上場株式等の譲渡所得に関する税率は、平成20年12月31日をもって10%の軽減税率が廃止され、平成21年1月1日以降は20%となる予定です(ただし、2年間は、譲渡所得等の金額のうち500万円以下については、10%の軽減税率適用)。早期の売却計画を立てている方は、平成21年度税制改正(12月中旬大綱発表予定)で軽減税率が延長される可能性があるため慎重な判断が必要です。
4.小規模企業共済への加入
小規模企業の個人事業主または会社役員の方が加入でき、共済掛金の全額(年間最高で84万円まで)が所得控除できます。今から年払い契約をすることで1年分の節税効果を受けることが可能です。なお、月払い契約の場合は、後から月額掛金を最低1,000円まで減額変更することも可能です。
5.ふるさと納税制度(詳細は10月1日号参照)
平成20年度税制改正で創設された税制で、個人の都道府県、市町村に対する寄付金が対象となります(寄付先は特に制限がなく、好きな地方公共団体を選択可能です)。住民税の1割程度を上限に税額控除できます(平成21年度分住民税から適用)。(久保 康高)