全国規模で実体経済の悪化が拡大し、日本経済が後退局面に入ったとされています。このような環境下では、少しでもキャッシュフローを改善することが求められます。不況期の節税対策として次のような制度をあげてみました。
● すでに納税した法人税を還付してもらえる
青色申告書を提出する法人の青色欠損金については、翌期以降7年間の繰越控除制度はよく知られていますが、その他に前年に繰戻して納税した税金を還付請求する「欠損金の繰戻し還付制度」があります。
残念ながら一般の法人については、平成22年3月31日までこの制度は停止されています。ただし、一部の法人に限り適用が認められており、その中で特に中小企業者(原則として資本金1億円以下の法人)については、設立事業年度の翌事業年度から原則5年に限り適用が認められていますので、条件を満たす会社は検討の余地があります。(追伸)ホットな情報→来年度の税制改正で資本金1億円以下のすべての中小企業に適用される可能性がでてきました。
〔適用要件〕
1)還付対象事業年度から欠損事業年度まで連続して青色確定申告書を提出していること。
2)欠損事業年度の青色確定申告書を期限内に提出していること。
3) 上記2)の申告書とあわせて、所定の還付請求書を提出していること。
〔ポイント〕
1)この制度は、事業税、都道府県民税、市町村民税にはありません。
2)制度の規定によれば、この申請をしますと税務調査が行われます。ただし、実務的には税務調査なしで還付されるケースもあるようです!! (斉藤 勝)
● 回収できない売掛金 損金計上OKなケースも
売掛金の回収は、キャッシュフロー改善策として有効だが、どうしても回収できないときには切り捨てて損金計上するのも選択肢のひとつ。
売掛金や未収請負金などの売上債権の貸倒れは、いわゆる「形式上の貸倒れ」とされ、法律上消滅したり、全額が回収不能にならなければ原則として損金計上できないような債権とは異なる基準が設けられている。
その形式上の貸倒れに該当するのは2つの場合。ひとつは、継続的に取引していた債務者について、取引の停止、最後の弁済期または最後の弁済時のうち、最も遅い時期から1年以上経過した場合(担保物がある債権を除く)。もうひとつは、法人が同一地域の債務者について有する売掛債権の総額が、その取立てのために要する費用に満たず、その債務者に対し支払いを督促したが弁済がない場合。
これらの形式上の貸倒れを計上する際は、全額を貸倒処理せず、1円以上の備忘価額を残す必要がある。 (廣島 清量)