政府が正式に決定した追加経済対策の中でも目玉となっているのは「住宅取得のための時限的な贈与税の軽減」である。法律案要綱の段階のためまだ可決事項ではないが、すでにある制度との併用が可能であるため話題になっている。
具体的には、「平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に20歳以上の者がその直系尊属から受ける自らの居住用家屋の取得に充てるための金銭の贈与については、当該期間を通じて500万円まで贈与税を課さない」というものである。
直系尊属とは父母や祖父母などのことであり、親や祖父母などからの贈与をすべて合計したうちの500万円までが非課税になる。なお、当該期間を通じてということなので2年間で500万円となる。
居住用家屋については、注釈で住宅1カ所への適用に限定されているが、同時に取得する敷地や増改築も対象になる。
さらに注釈では、すでにある暦年課税または相続時精算課税の従来の非課税枠に合わせて適用可能としている。
暦年課税は従来通りの課税方法であり、110万円を超える贈与があった場合に以下の算式で贈与税を計算する。
( 贈与財産の価額 - 110万 ) × 税率 - 控除額 = 税額
この110万は贈与税の基礎控除額(毎年)であるが、追加経済対策によればこれに500万を合わせた610万までが暦年課税の非課税枠となる。
相続時精算課税は、65歳以上の親から20歳以上の子である推定相続人が財産を生前贈与された場合に、暦年課税との選択で適用できる制度である。父母からの贈与に対しそれぞれ2,500万円の控除額があり、これを越えた部分に対して一律20%の税率で課税される。
さらに同制度には「住宅取得等のための資金の贈与を受けた場合の特例」がある(平成21年12月31日まで)。この場合は親が65歳未満でも適用でき、2,500万円に上乗せで1,000万円の住宅資金特別控除額が追加され3,500万円まで控除が可能になる。この特例を適用すれば追加経済対策により4,000万円まで非課税枠が拡大する。
ただし注意点もある。相続時精算課税は生前贈与を行いやすくするための制度だが、いったん選択すると暦年課税には戻れない。また、相続時に精算しなければならずその際は贈与時の価額で計算する。選択するには十分に検討することが必要だ。 (岡村 香織)