現下の厳しい経済社会情勢の影響を受け、資金繰りに苦しむ中小企業等が
社会保険料の支払いに困窮し滞納することが増えてきました。
そこでこの度、そのような事業主等の経済的負担の軽減を目的とし、納期限
から一定期間の日数については、延滞金利率を軽減する法律が成立しました。
社会保険料は毎月の健康保険料及び厚生年金保険料を翌月末までに事業主が納付することとなっていますが、このうち半分は従業員負担分であり従業員から預かっているものであることから、滞納に対しては厳しい措置がとられていました。
現行では企業が厚生年金保険料や健康保険料、労働保険料などを滞納した場合、納期限の翌日から納付の前日までの期間、年14.6%の延滞利息が徴収されています。
今回の改正で、これが納期限から3ヵ月以内に限り、日銀が定める基準割引率に4%を加算した利率(21年度の場合4.5%)に引き下げられます。
※ 労働保険料については年1回の徴収であることや申告方式であることから軽減される期間は2ヶ月間です。
※ 軽減利率が適用されるのは平成22年1月1日以後に納期が到来するものからです。
<税務上の処理>
社会保険料の延滞金は会計上支払利息等として処理し、税務上(法人税等の課税所得の計算上)も経費に計上することが出来ます。
これに対し、国税や地方税を滞納した場合に課される延滞税等(利率は社会保険料と同様に年14.6%(納期限から2ヶ月間は4.5%))は会計上租税公課等として処理しますが、税務上は経費から除外されてしまいます。
今回の改正で税金を滞納した場合の延滞税等と社会保険を滞納した場合の延滞金の利率が同じになるため、税務上経費から除外されてしまう延滞税の元となる税金から先に納付したほうが有利ではありますが、社会保険料の延滞金も軽減されたとはいえ高い利率で課され
てしまうため、延滞をしないに越したことはありません。 (水田 裕之)