2009年度の税制改正大綱には、2012年より「少額の上場株式等の非課税措置」を創設することが盛り込まれ注目を集めています。この制度は「日本版ISA」と呼ばれており、今後、詳細な制度設計をした上で、2010年度税制改正において税制上の措置が盛り込まれる予定となっています。
ISAとは、Individual Savings Account(個人貯蓄口座)の略であり、個人投資家の投資や貯蓄を奨励することを目的として1999年にイギリスで導入された制度です。
株式型ISAと預金型ISAの2種類があり、イギリスの18歳以上(預金型は16歳以上)の居住者はそれぞれ1口座ずつ開設することができます。
ISA口座に預金すると、その貯蓄や投資からの配当、受取利子等の収入が非課税となり、また株式等への投資で得られたキャピタルゲインまでもが非課税となります。
預け入れの上限は年間7‚200ポンド(=約105万円)(うち預金型の上限は3‚600ポンド)で、最低預託期間や最低預入額、満期などは存在しません。
つまり、年間約100万円までの投資であれば、10年、20年、30年経ってその投資資産がいくら大きくなろうとも、売却益に対する課税はされないのです。
現在、日本ではこのイギリスの制度に倣い「日本版ISA」の制度設計を行っています。今のところ、年間100万円を上限に、2012年から5年分、つまり500万円(100万円×5年間)分を非課税にし、保有期間は最長10年とすることが予定されています。
なお、毎年の組入れ限度額である100万円に対する未使用枠は翌年以降に繰り越すことがで
きず、また、途中で売却した場合の空き枠を再利用することも認められない予定です。
上記のような制度設計だと、11年以上保有し売却益が出た場合に課税されてしまうことになります。
この制度は積立投資を用いた資産形成に非常に適していると思えるだけに、イギリスのような投資期間・保有期間が無期限になっていないことが惜しまれます。
「貯蓄から投資へ」の流れに再び制度面から追い風を与えることができるのか。今後の議論に期待したいところです。 (久保 康高)