世間では2009年は「100年に一度の大恐慌」と言われております。あまりにも急激な環境変化に戸惑ってしまった中小企業経営者の方々も多いと思います。エコノミストは「景気の急降下は終わったが、回復はしない」という見方が大半です。不況という環境変化に原点を見つめ直さざるを得なかった経営者も多かったことでしょう。そうした経営者の方々を対象に、原点を見つめ直した上で、少しでも環境対応力や適応力をつけ、今後の経営のヒントを得ていただくため、以下の書籍をご紹介させていただきます。
『不況の歩き方~実は大勢いる「不況リッチ」になる法則~』主婦の友社 佐藤昌弘 著
一行でご紹介するならば、不況を前向きに捉えて、不況リッチになるためのハウツー本です。著者自身は、「不況」という状態は存在しない、なぜなら、不況とは単なる環境変化のひとつにすぎないから、という考え方をもたれています。そしてこの環境変化に、経営者はどのように対応していけばよいのか?ということを不況時のキーワード「消費のスライド現象」に着目して解説し、その打開策のアイデア事例を紹介しています。
平成21年9月29日付日経新聞朝刊の3面に『9月19日から5日間にわたったシルバーウィーク中、ネット通販は、楽天の「楽天市場」の販売総額が今年のお盆(8月12~16日)を25%上回った。連休中に店頭で品定めしてから通販で買う客が目立った』という記事がありました。また、この現象に気をよくしたかどうか分かりませんが、楽天の三木谷社長は「ネットで取引されているモノを見ると、不況だとは思わない」と語っています。この記事や発言もそうしたスライド現象の一例といえ、消費全般は生活防衛のために廉価な実用品にシフトしているものの、一方で魅力あるものは高額でも買われているという事実が存在しています。
特に本書で解説されている、不況下に生まれる巣ごもりビジネス・倒産ビジネス、不況でも関係のないビジネス、不況時に活かすマーケティング手法などはとても役立つと思います。
不況でも関係ないビジネスの導入部分では、職業に着目し総務省による統計「職業小分類別就業者数の推移」を紹介しています。総務省の統計には、就業人口の推移表とその増減グラフが時系列で掲載されており、単に就業人口のトレンドだけでなくおおよその参入障壁の高さを伺い知れたり、就業人口とマーケットサイズとの比較によりその需給ギャップを見て参入判断をすることもできます。新しい分野の事業に参入しようと考えておられる経営者にとっては、とても参考になると思います。
不況時に活かすマーケティング手法としては、お得感を演出する「値引き率の法則」
の紹介や不況下を真正面から歩いていくのに必要なスキルである集客力・営業力・顧客開拓力・広告力のうち「開拓力」=「見込み客の発掘力」×「セールス力」×「リピートさせる力」×「循環させる力」に力点を置いて本質論から解説されています。
作者は、不況の正しい歩き方とは変人扱いされても「常識の打破」・「発想の転換」を繰り返し、自分の信ずる道を歩むことと、最後に本書を締めくくっています。 (久保 康高)