鳩山内閣が編成した政府税制調査会が開催した第1回会合で、今後の方向性について話し合いが行われました。相続税については現行の法定相続分課税方式から遺産課税方式へ改めていくとのことですが、それによってどのような変化があるのでしょうか。
例えば、父親が残した1億円の財産を息子と娘で相続したとします(ここではわかりやすくするため配偶者はいないものとします)。息子が8,000万円、娘が2,000万円を相続した場合、法定相続分課税方式では次のように計算します。
①課税遺産総額 1億円-7,000万円=3,000万円
②各相続人の法定相続分 3,000万円÷2=1,500万円
③相続人1人当たりの税額 1,500万円×15%-50万円=175万円
④相続税の総額 175万円×2=350万円
※①7,000万円は基礎控除。基礎控除の計算方法は、
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数(ここでは息子と娘の2人)
※③課税遺産総額3,000万円以下の場合、税率は15%、控除額は50万円
遺産課税方式では以下のように相続税を計算します。
①課税遺産総額 1億円-7,000万円=3,000万円
②相続税の総額 3,000万円×15%-50万円=400万円
ここでお分かりのように、遺産課税方式のほうがやや税負担が重くなっています。法定相続分課税方式では法定相続人数をもとに算出した相続税の総額を実際の相続分に応じ按分して課税するのに対し、遺産課税方式では被相続人の遺産総額に対して課税します。このため、税率が同じでも遺産課税方式では控除額50万円を法定相続人分引けず税額が増えてしまうわけです。ただし、ここでは基礎控除や税率が現行のままという仮定で計算しており、数字が変えられることも考えられます。
遺産課税方式の利点は、遺産分割の仕方によって相続税の総額が変わることがないため税務の執行がしやすいところです。
しかし各相続人の取得額に応じた累進税率が適用されないため、担税力に応じた課税という点では限界があると言われています。また、仮定計算の段階ではありますが課税遺産総額が多いほど現行制度より税負担が多くなると予測されるため、今後も相続税対策に注意を向ける必要がありそうです。 (岡村 香織)