「来年から残業させた場合には5割増しの残業代を払わなければいけないのですか?」という質問をたまに受けます。
確かに労働基準法の改正があり、平成22年4月1日から、下記のように月の残業時間が増えるにつれ、3段階で高い残業代を支払わなければならなくなります。
残業時間45時間まで・・・2割5分以上増(義務)
残業時間45時間超
60時間まで・・・2割5分超増(努力義務)
残業時間60時間超・・・・5割超増(義務)
しかし、当面は大企業に限られており中小企業については3年後に改めて検討することとされています。
労働基準法は労働条件の最低の基準を定め、その基準以下で働かせた使用者には罰則の適用があるという法律です。強盗をすれば処罰されるのと同様に、労働基準法に違反して残業代を払わなければ処罰されます。
当面猶予されているとはいえ、罰則付きの法律が改正されたことは、中小企業も重く受け止めておく必要があります。
◎ 5割増の残業代は時間単位の有給休暇に代えてもよい。
~月60時間を超えた残業には5割増で残業代を支払え~
来年度からたいへん厳しい法改正となるわけですが、合わせて“代替休暇”の仕組みができます。
5割増の残業代の支払をしなくても有給休暇を与えればそれでいいですよ、ということですが、今まで通り2割5分の割増賃金分は払わなければなりません。「5割のうち残りの2割5分を、割増賃金の支払に代えて、有給の休暇(代替休暇)の付与で代替することができる」というものです。
例えば、68時間残業をしたとき、60時間を超えた8時間分を休暇と振替えようとすると、その代替休暇は8時間の2割5分で、時間にすると2時間となります。年次有給休暇が時間単位で取れるのであれば、代替休暇2時間と年次有給休暇6時間で1日の休暇とすることができることになります。
年次有給休暇は1日単位で取ることが原則です。けれども法改正により、労使協定を締結すれば、時間単位での有給休暇取得が可能になります。
◎「残業は月45時間以内に抑える」推進を!
残業時間が月45時間以内であれば、今までどおり2割5分増の残業代でいいのです。中小企業には義務化の猶予があるので今のうちから、人材の確保等をして、月45時間以上の残業はしない・させないという体制作りに、真剣に取り組みましょう。 (水田 裕之)