政府は、平成21年11月20日に「緩やかなデフレ状況にある」と正式表明しました。確かに値下げするしか売る戦略が取れずに、「忙しさは同じなのに儲けだけが減っていく」と嘆いておられる経営者の方々もいらっしゃいます。そんな経営者の方々は次のような「視点」を持って考えた上で経営決断されることをお勧めいたします。不況下の物価下落(デフレスパイラル懸念)という環境変化の下では需要(商品を欲しい人)不足が起こるものの、需要の存在自体がなくなってしまうわけではないので、特にこれからご紹介する「魚の目」を大事にし、経営戦略で差別化し、マーケティング力と顧客対応力で同業他社より多くの顧客・売上を獲得することが大事であると考えています。
「虫の目」近いところを、複眼を使って様々な角度から詳細に注意深く見る目
「鳥の目」虫では見えない広い範囲を、高いところから大掴みに会社全体像を俯瞰する目
「魚の目」水の流れや潮の満ち引き、つまり世の中の流れ(変化・異常点)を敏感に感じ取り先を読む目
以上3つの目をきちんと機能させると、下記のようになります。
1.仕事の優先順位が明白になる
2.社長自身がやらなくてはならないことと従業員や外注先に依頼すべきことの区別が明白になる
3.今すぐ結果が出ないことにも着手できる
4.社長が忙しいと言わなくて済むようになる
例えば、特殊技術・新商品を開発するとか、得意先(リスク)の分散を図る、といった経営環境に対応するための「決断」がないと会社としての存在が危ぶまれます。日常的な判断は、鳥の目さえあればできますが、経営の方向性を決定する「決断」には魚の目が必要です。経営者として、魚の目だけは曇らせてはいけないということをお伝えしたいのですが、月次決算を早くしても、リアルタイムでマネジメントが可能になるわけではないということです。3つの視点が欠けた月次決算情報をいくら早く収集しても適切な企業行動には繋がらない点は考慮にいれておいた方がよさそうです。
厳しいことを言うようですが、「景気がよかった時代にいかに何もしていなかったか」「今まで、経営能力があるから儲かっていたのではなかった」と認識し「なぜ価格を下げなくても勝負できる商品をいくつも持っていないのか」「なぜ値切られない顧客層と付き合ってこなかったのか」といった課題と向き合いましたか?次の環境変化に備えようと現実を見直す気になりましたか?
平成21年11月19日付日経新聞1面の「春秋」欄に『「優しすぎると、会社が揺らぐ」からつらい。』『最後は理屈より「あの人が言うのなら仕方がない」で決まる』『「社長」の肩書だけでは務まらないのが経営者の仕事の難しさである。』という記事が載っていました。“あの人”とはきっと「魚の目」を持った人に違いないでしょう。 (久保 康高)