全国の信用金庫の貸出残高を預金残高で割った「預貸率」が2010年3月末に54.7%となり、過去最低を更新したと報道されました。その後も長期的な預貸率低下傾向はなかなか止まりそうにない情勢となっています。
そんな情勢の中、金融機関が『経営改善計画書』の提出を迫るのは、金融機関自身の不利益を避けるためと融資先企業の抜本的改革を促すためです。
経営者の方々には「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を事例中心にすべて読んでから計画書に対応して頂きたいのですが、ここでは該当箇所のポイントのみをピックアップして説明します。
作成時に大事なことは、『経営改善計画書』が「実現可能性の高い抜本的な再建計画の作成要件をすべて満たしている」かどうか、ということです。
金融検査マニュアルには、中小企業融資についての特別なルールが定められており、作成すべき計画については、中長期の計画期間を認めつつ、実現性の高い計画が要求されています。
「実現性が高い」とは、具体的には以下の3点をすべて満たす必要があるということです。
①計画の実現に必要な関係者との合意が得られていること
「必要な関係者」とは、株主、仕入先・販売先、金融機関以外の資金調達先も含め、すべての関係者を意味します。
②計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、その計画を支える追加支援が必要と見込まれる状況でないこと
当初の返済猶予や債権放棄を行った後の計画期間中に、追加融資が必要な計画ではなく、自助努力による再生を要求しているものです。
③経営改善計画書の売上高、費用及び利益の予測が十分厳しいものになっていること
「十分厳しい計画」とは、たとえば、売上計画100に対して実績値が80を下回らない程度の“堅めの計画”で、右肩上がりの数値を計画期間中に盛り込むことは、当然実現可能性が高いとは評価されず、その根拠を出せと追及されることになります。
以上、①~③の条件を満たす可能性の高い計画であるとともに、次の④と⑤《卒業基準》を満たしていることが求められます。この条件を満たすと、金融機関は債務者区分を「要管理先」に引き下げる必要がなくなるので、金融機関、債務者ともにメリットが生じます。
④経営改善計画書の計画期間がおおむね5年以内であり、かつ計画の実現性が高いこと
⑤計画期間終了の債務者区分が原則として「正常先」となる計画であること
※正常先・・・業況が良好であり、かつ財務内容にも特段の問題がない融資先
以上のように金融機関に『経営改善計画書』の提出を求められた場合、少なくとも4、5年先には収益が改善しており財務内容についても問題のない計画をまとめ上げる必要があり、特に財務内容の評価については専門的になるので、このような場合には私どもひろしま会計にご相談ください。(久保 康高)