~もし欠損金の控除額が半分になったら~
新聞報道によると政府税制調査会の中小企業に対する増税論議が開始されています。民主党のマニフェストに書かれた中小企業の所得800万円までに対する法人税率の引き下げ(18%から11%へ)実行にあたっての代替財源を確保するために、赤字控除枠の半減が議論されています。
現在の欠損金の繰越控除制度は、過去7年間に出た赤字を当期の黒字(過去の赤字額を限度として)と相殺できるというものです。それを当期の黒字の半額までしか控除できないようにしようと金額にまで制限をつけた改正案の内容です。
例えば、過去の赤字が1,000万円あり、今期の黒字が800万円の場合、赤字の1,000万円のうちの800万円を使って今期の税負担をなくすことが現行制度では可能です。
ところが、もしこの改正案どおりに改正されると、800万円の半分の400万円しか過去の赤字を利用できず、残りの400万円については、税負担が生じるということになります。
国税庁が発表した2009年事務年度の法人税の申告事績によると、「2009年4月~2010年3月決算ベース」で法人の黒字申告割合は25.5%となっており、単純計算で約75%の赤字申告会社に増税という大きな影響が出ることとなります。
ただ、中小企業の赤字の原因を分析すると、比較的高額な役員報酬や地代家賃の支払により結果的に赤字になってしまっている会社も少なくありません。
そこで再び、役員報酬の給与所得控除額を一般社員の半分程度に抑えるという案も検討されています。去年の税制改正で廃止されたばかりのいわゆる「1人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置の修正版です。
改正された場合の対応策としては本業が比較的順調で赤字が続かないと思われる会社は、あまり役員報酬を高めに設定せずに極力赤字を作らないことと、過去の赤字はなるべく早く利用し終えるということであり、無理な役員外しは今後の経営に悪影響を与える可能性があり慎重になるべきと思われます。(久保 康高)