相続税の基礎控除の縮小など、今後の動向から目が離せない23年度の税制改正。衆議院で受理されたまま、東日本大震災等の影響もあり一向に審議が進んでいませんでした。年度末で期限が切れる法案はつなぎで3ヶ月延長。そして6月末になり再び期限が訪れる租税特別措置などの一部を、成立する見込みの立たない改正案からは切り離し、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」として6月10日に国会へ提出、同22日に成立しました。
今回は、その中からいくつかの改正内容をご案内します。
◆ 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設
確定申告等をその提出期限までに提出しないことにより各税金を免れたものは、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとする。
※公布の日から起算して2月を経過した日以降にした違反行為について適用。
◆ 年金所得者の申告手続等の簡素化
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入が400万円以下であるものが、公的年金以外の所得金額が20万円以下であるときは、確定申告書の提出を要しない。
※従来は公的年金のみであっても、所得控除を差し引いた結果、残額がある場合には確定申告書の提出が必要でした。
◆ 贈与及び相続時精算課税の特例措置の対象範囲の拡大
直系尊属からの住宅取得等資金の贈与税の非課税措置及び特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例措置に、先行してその敷地の用に供される土地等を取得する資金が追加されました。
※従来は家屋の新築、増改築等の為の金銭のみが非課税の対象で、23年度の非課税額は1000万円です。
平成23年1月1日以降の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用。
まだ成立したばかりの法律であり、具体的な内容はこれから明らかになっていくと思われますが、中小企業の税務に大きな影響を及ぼす可能性のある内容も多くありますので、注意が必要です。
(斉藤 勝)