中小企業は大企業に比べて生産性が低いと言われています。2011年版中小企業白書では、次のデータを示しています。これを見ると、飲食宿泊を除くいずれの業種においても大企業の労働生産性は、中小企業を大きく上回っています。
業種・規模別の従業者数と労働生産性(単位:円/時間)
中小企業 |
||||||
卸売 |
運輸 |
建設 |
製造 |
小売 |
サービス |
飲食宿泊 |
2,899 |
2,330 |
2,302 |
2,976 |
2,596 |
2,268 |
2,704 |
大企業 |
||||||
卸売 |
運輸 |
建設 |
製造 |
小売 |
サービス |
飲食宿泊 |
5,339 |
5,766 |
5,479 |
6,611 |
4,590 |
4,408 |
2,609 |
◆労働生産性=粗付加価値額÷(従業員数×総実労働時間数)
◆粗付加価値額=営業利益+役員給与+従業員給与+動産・不動産賃貸料+減価償却費
中小企業が労働生産性の向上を図るためにはどのような取組が必要なのでしょうか?次のデータは中小企業の様々な取組が及ぼす労働生産性への影響の重要度について中小企業の認識を示したものです。
労働生産性向上のための取り組みの重要度(単位:%)
|
非常に重要である |
重要である |
余り重要でない |
重要でない |
①顧客数拡大 |
40.2 |
38.7 |
16.2 |
4.9 |
②顧客単価上昇 |
33.6 |
48.1 |
14.6 |
3.6 |
③人材確保・育成 |
31.1 |
48.8 |
13.5 |
6.5 |
④技術革新 |
24.5 |
46.4 |
21.9 |
7.2 |
⑤IT化 |
12.6 |
44.7 |
31.6 |
11.1 |
⑥自動化 |
14.4 |
35.5 |
34.7 |
15.4 |
⑦省エネ |
11.5 |
43.1 |
34.9 |
10.5 |
⑧業務工程改革 |
24.4 |
49.5 |
18.5 |
7.6 |
資料:中小企業庁委託「生産性向上に関する調査」(2011年11月㈱野村総合研究所)
一般的に、労働生産性を向上させる方法として、大きく二つの方法が考えられます。
1)企業が製品やサービスの開発等を通じて新たな付加価値を創出することにより同じ水準の労働や資本等の生産要素の投入量が生み出す付加価値を増大させる「付加価値の拡大」の方法、上の表の①から④が該当します。
2)企業が業務の合理化や生産効率の高い設備への更新等により同じ水準の付加価値額を生み出すために必要な生産要素の投入量を減らす「効率性の向上」の方法、上の表の⑤から⑧が該当します。
付加価値の拡大と効率性の向上について、中小企業の認識を見ると付加価値の拡大を重要と認識する企業が増加しているようです。顧客拡大、顧客単価上昇、人材確保・育成、技術革新といった付加価値の拡大に積極的に取り組んでいくことが重要であると考えていることが分かります。(廣島 清量)