平成24年2月29日号で中小企業の労働生産性の向上について、また平成23年9月21日号で経営における「人の効率」について、ご紹介いたしました。
労働生産性を用いて現状分析する上で、下記の関連指標(「一人当たり人件費」と「労働分配率」)と「労働生産性」の分解指標を解説いたします。付加価値の意味が理解しにくい場合は、「粗利益」と読み替えて大意を掴んでください。
(一人当り人件費) (労働分配率) (労働生産性)
人件費/従業員数=人件費/付加価値×付加価値/従業員数
「一人当り人件費」は、文字通り人件費を従業員数で割って求められます。その金額が大きければ、そこで働く従業員も経済的に豊かであり労働に対するモチベーションも高いと言えます。その「一人当り人件費」を大きくするためには、「労働分配率」と「労働生産性」のいずれかを上げるしかありません。さらに「労働生産性」は、以下のように分解できます。
労働生産性=付加価値/従業員数
=付加価値/売上高×売上高/従業員数
↑ ↑
(付加価値率) (一人当たり売上高)
「労働生産性」を上げるためには、「付加価値率」と「一人当り売上高」のいずれかを上げるしかありません。「一人当たり売上高」を上げるためには、売上(スピード)を上げるか、従業員数を減らすしかありません。後者を検討する前に、いかにして「一人当り売上高」を向上させるかに全力を尽くす必要があります。従業員(人件費)を減らしたもののそれ以上に付加価値額を下げてしまっては意味がないからです。
つまり、付加価値額と労働生産性指標を軽視(無視)した経営意思決定をしないように気をつけなければなりません。
関連指標としてご紹介した「労働分配率」は一般的に50~60%が適正とされています。同じく分配率が高い場合には人件費の高さに原因があるのか、それとも付加価値の小ささに原因があるのかよく検討しなければなりません。
理想の会社とは、雇用を守りつつ(人員削減をせず)、労働生産性(人の効率)を向上させている会社であるとご理解いただけると思います。労働生産性概念を正しく理解し、経営する上での重要指標に位置付け、お役立てください。(久保 康高)