帝国データバンクの発表(2011年12月)によると国内企業の65.9%が後継者難となっている実態があり、地域別にみると関東67.9%、中部65.6%、近畿68.6%となっている。特に年商10億円未満の中小企業にあっては実に7割が後継者不在となってる。
このような実態の背景には次のような問題があると言われている。
① 親族へ事業承継したいが、承継する意思がある親族がいない。または後継者に経営者としての適性がない。
② 従業員(役員)へ事業承継したいが、自社株式の時価が多額であり社員(役員)が買取資金を準備できない、借入金等の会社の債務の保証をする必要があるが保証人として適確であるか、経営者としての適性がないなどの問題が多い。
③ 廃業してしまうと従業員の生活や取引先への影響が大きく、場合によっては連鎖倒産を引き起こす可能性がある。
以上のような事業承継の諸問題を解決する手段としては「M&A」が優れていると言われている。
その理由として次のような点が挙げられる。
① 「M&A」は自社を第三者に譲渡する方法ですが、譲渡先は当然経営能力のある人または企業であるので、会社の存続が保証される(譲渡側はそれを見極める必要がある)。
② 譲渡は自社株等を売却する方法等により行われるので譲渡対価として創業者利潤を得ることが出来る。譲渡対価は自社の企業価値(現在価値、将来価値)を公平に評価して算出され、譲渡側、譲受側、双方納得の上決定される。
③ 譲渡により得た資金は、相続税の納税資金の確保、あるいは第二創業を目指す場合はその資本とすることが出来る。
④ 従業員の継続雇用を可能にし、取引先への影響を最小限に抑えることが出来る。
ところで、譲受先が「M&A」を実行する目的は何でしょうか、次のような目的が挙げられる。
① 規模の拡大を目的とした、他地域への進出や顧客拡大 ⇒この場合の対象となる企業は、主に同業者となります。これを「水平統合」と呼んでいる。新規に事業を立ち上げるよりも、比較的短期間に事業展開できるメリットがある。
② 川上・川下業種への進出 ⇒より多くの利益の確保のため、商流や外注政策の見直しによる製造コストや物流コストの削減が目的、自社の川上企業や川下企業が対象となる。これを「垂直統合」と呼んでいる。
③ 多角化 ⇒成長性の高いマーケットへの進出を狙った、異業種展開のための「M&A」も最近は増加している。
2012年は後継者難企業がピークを迎えると言われており、今や事業承継は緊急の経営課題であり、安定した事業承継が経営者の最大の義務となりつつある。(廣島 清量)