今回は公正証書についてのおおまかな説明と法律で公正証書の作成が求められている契約等についてご紹介いたします。
公正証書には、任意後見契約公正証書、遺言公正証書、金銭の貸借契約に関する公正証書、土地・建物などの賃貸借に関する公正証書、離婚に伴う慰謝料・養育費の支払に関する公正証書並びに事実実験に関する公正証書などがあります。(事実実験に関する公正証書の一例は、尊厳死宣言公正証書などです。)
公正証書は、法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。公文書ですから高い証明力があるうえ、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに移ることができます。すなわち、金銭の貸借や養育費の支払など金銭の支払を内容とする契約の場合、債務者が支払をしないときには、裁判を起して裁判所の判決等を得なければ強制執行をすることができませんが、公正証書を作成しておけば、すぐ、執行手続きに入ることができます。
(法律で公正証書の作成が求められている契約等)
法律で公正証書の作成等が求められている契約等があります。特に近時、公正証書にしなければ、法的な効力が認められない契約等の法律行為ができました。
その一つは、事業用定期借地権の契約書です。
平成4年8月1日、借地借家法の施行により、事業用借地権の制度(平成20年1月1日以降、名称が「事業用定期借地権」と変更)が設けられました。この制度は、専ら事業の用に供する建物を所有する目的で設定される借地権で、契約の更新がなく、契約上の存続期間が経過すれば確定的に終了するものです。この契約は、公正証書によってすることが要件とされています。
もう一つは、任意後見契約の契約書です。
成年後見制度の施行(平成12年4月1日)に伴い、任意後見制度が発足しました。任意後見制度は、本人が後見事務の全部又は一部について任意後見人に代理権を付与する任意後見契約を事前に締結することにより、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下で任意後見人による保護を受けることができるという制度です。任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によることが必要です。(平林 明子)