本年1月からスタートした「企業型確定拠出年金のマッチング拠出」の導入企業が7月末現在で1,121社に増加していることが、厚生労働省が発表した企業型年金の運用実態で明らかとなりました。
そもそも確定拠出年金、マッチング拠出とはなにか。以下でご説明いたします。
◆確定拠出年金(日本版401K)制度
確定拠出年金は「拠出額=掛け金」が決まっている掛け金建ての年金制度です。掛け金を企業が負担する「企業型」と個人が負担する「個人型」があり、一定額までの掛け金については損金算入(企業型)、または所得控除(個人型)できるなどの税制優遇を受けることができます。ただし、運用商品決定は個人が行い将来に受け取ることができる年金の額が運用利回りによって変動するため、従来より自己責任の重い年金制度と言われています。
◆マッチング拠出とは
確定拠出年金制度は企業型と個人型に区分されているため、一般的な社会保険のように労使の負担分担は認められていませんでした。企業型において個人(従業員)が任意で掛け金を増やしたいと思っても、個人が負担した掛け金については所得控除なしでした。そこで本年1月の改正により、会社側で規約に定めることにより従業員が上乗せで拠出できるようになりました。これをマッチング拠出と呼んでいます。従業員が拠出する掛金の金額は自分で決められますが無制限に積み立てができるわけではなく、拠出金額には制約があります。ちなみに、企業型の拠出限度額については、厚生年金基金や確定給付企業年金を導入している企業は月25,500円、導入していない企業は月51,000円です。
マッチング拠出のメリットで特に大きいのが税制面の優遇です。従業員が拠出した掛金は所得控除(小規模共済等掛金控除)の対象となります。公的年金だけでは不足する老後資金準備のために拠出した全額が所得控除されます。仮に税率が15%(所得税5%+住民税10%)の場合、年利15%の運用益を得ているようなものです(マッチング拠出では個人の手数料負担なし)。また、運用益は非課税で受取時は退職金や企業年金に準じた税制優遇が受けられます。受給時には、年金給付の場合は雑所得として公的年金等控除、一時金受け取りの場合は退職所得控除の対象に合算して計算することができます。
その反面、中途解約は原則不可能で60歳まで受け取ることができません。また、確定拠出年金の運用は自己責任のため元本割れになる可能性があります。元本割れを避けるには元本確保型運用商品を選ぶという方法もあります。
年金資金準備方法として拡がりつつある確定拠出年金。マッチング拠出では、法人負担額は損金に、個人負担額は所得控除になり節税の可能性は大きいと言えます。メリット、デメリットを知ったうえで選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。 (岡村 香織)