年末年始の毎年恒例イベントに「年末調整」というものがあります。会社にとっては、もはや当たり前であるこのイベントですが、従業員の中には「この時期になると会社から書類を書くように言われるから、とりあえず書いて提出しているだけ・・」こんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。かく言う私も、昔はそんな従業員の一人でした。
そもそも年末調整とは給与所得者の確定申告と言われます。事業所得や不動産所得のある方は、毎年確定申告をされている事でしょう。しかし、サラリーマンが国民の大半を占める現状で、全ての人が確定申告書を税務署に提出したらどうなるでしょうか。税務署等の申告会場は大行列のパニック状態になってしまうでしょう。そんな事態にならない様に給与所得しかない個人は、その勤め先での年末調整手続きによって確定申告と同様の手続きを行い、一年間の税金を精算しているのです。
【毎月の給与から天引きされる所得税は仮払い】
1年間の収入や、その収入に対して課税される所得税は、1年間が終わって初めて確定します。しかし、1年間が終わった段階で税金を計算し、個人がまとめて国に納めるという事になると金額的にも多額になってしまい、中には納められない人も出てくる事でしょう。そうならない様に、毎月収入に応じた税金を会社が強制的に徴収し、個人に代わって会社が納めるという仕組みが源泉徴収です。当然、年間の収入は確定していませんので、その月の収入が1年間続くという前提で各月の税金が仮計算されることになります。例えば7月から入社し、月60万円の給与で半年間勤務したAさん(年収360万円)と、月30万円の給与で1年間勤務したBさん(年収360万円)とを比較してみるとどうでしょう。
※ 扶養1人基礎控除以外はないものとして計算すると次のような結果になります。
Aさんの年間報酬360万円(60万×6)徴収税額238,800円(毎月の税額39,800×6)
Bさんの年間報酬360万円(30万×12)徴収税額79,000円(毎月の税額6,600×12)
AさんもBさんも年間の収入は同じ360万円となりますので、確定年税額は同じ79,000円です。Bさんは元々年収360万円を前提として毎月所得税が徴収されていましたので、徴収額合計と確定年税額にほとんど差がありません。(200円還付) しかし、Aさんは年収720万円を前提として毎月所得税が徴収されていましたので、結果的に年収が360万円になった場合には、かなり多めに徴収されていた事になります(還付額159,800円)。これは毎月の徴収額が仮計算であるが故に起こる事であり、こういった精算を年末調整で行うのです。
【配偶者控除や扶養控除は年末時点の状況で判断される】
所得税の計算上、所得から控除される「配偶者控除」や「扶養控除」は、その年の年末時点で該当者がいれば控除の対象となります。「12月に結婚した」、「12月から両親と同居し生計を一にしている」といったケースの内、一定の要件を満たした場合などです。毎月の源泉徴収税額は扶養人数も加味されて計算されているため、扶養人数が1人増えれば、その分所得税が低くなります。今は16歳未満の子供は扶養控除の対象外となってしまっておりますが、その昔「年末に生まれた子どもは親孝行」といわれた由縁です。従業員にとっても重要な手続であるこの「年末調整」。一度、社内で仕組みについて説明会などの機会を設けてみてはいかがでしょうか? (斉藤 勝)