平成25年1月16日号で事業引継(事業譲渡)の際の譲渡価額の基礎となる株価の目安(時価純資産+のれん)をご紹介いたしました。事業引継は、よく結婚に例えられます。そこで今回は、その進行過程を「結婚」と比較してご説明いたします。また、譲渡価額の一部を構成する自社株の評価方法についてもご紹介いたします。
○ 進行イメージ
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事業引継の場合 |
結婚の場合 |
1 |
譲渡希望会社のノンネーム企業概要書の作成 |
釣書・身上書の作成 |
2 |
譲受希望会社(承継会社)との面談・会談 |
お見合い |
3 |
基本合意書(LOI)の締結 |
結納 |
4 |
譲渡希望会社の査定・監査(デューデリジェンス) |
釣書・身上書の内容審査・確認 |
5 |
最終契約・クロージング |
結婚式・入籍 |
◇1の段階で譲渡希望会社の主なグッドを抽出し、ノンネームで魅力を演出します。
◇2の段階で期待されるシナジーが発揮されるかどうかを中心にトップ会談を行います。
◇3の段階で独占交渉権の付与、最終契約までのスケジューリングの確認、デューデリジェンス(以下、DDと略す)への協力などの事項を盛り込み、特定条項については法的拘束力(約束を破った場合の法的罰則)を与えることもあります。
◇4の段階では、DDと呼ばれる譲渡希望会社の主にバッドの抽出をします。ここでは、各種のマイナス査定やリスク査定が実施されます。当事者が意思決定に影響を及ぼすような問題点を調査・検討・検証する手続で、財務・税務・人事労務・事業・法務・環境・不動産・反社等、種々の分野ごとに専門家チームを組んで実施します。
◇5の段階では、譲渡会社が圧倒的に有利な立場(譲渡会社より自社をよく知っている人はおらず、法律上は対象株式さえ譲渡すれば義務を履行したことになる)のため、一般的に一定時点において一定の事項が真実かつ正確であることを譲渡会社に表明保証して頂きます。
○ 自社株の評価方法
中小企業の場合「もし今、会社を解散させたら株主にどれくらい残余財産が帰属するか」という純資産アプローチで評価します。具体的には、会社の資産をすべて時価(相続税評価額)で処分し、売却利益に対して法人税(利益に対して約32%)を払い、負債をすべて返済した残額を、発行済株式総数で除して1株当たり純資産価額を求めます。
資産 1億円 |
負債 4,000万円 |
資本 6,000万円 |
↓相続税評価額(税務DD)
①簿価 1億円 |
③負債 4,000万円 |
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④分配可能額=(①+②)-③-⑤ 3億-4,000万円-6,400万円=1.96億円 |
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②評価差額 (含み益)2億円 |
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⑤評価差額に対する法人税額等 2億円×32%=6,400万円 |
∴1株当たりの純資産価額=1.96億円÷200株=98万円
(久保 康高)