労働契約法とは、労働契約に関する基本的なルールを規定した法律で、昨年8月10日に、「労働契約法の一部を改正する法律」が公布され、有期労働契約について、下記の3つのルールが規定されました。今回の改正が行われた背景としては、全国で約1,200万人と推計されるパート労働、派遣労働をはじめとする有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新している実態にあり、その下で生じる様々な課題を解消し、働く人が安心して働き続ける事ができる社会を実現するためとされています。
Ⅰ:無期労働契約への転換
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約へ転換されます。有期契約期間が1年以上の場合、契約と次期契約との間に6カ月以上の空白期間がある時は、前の契約期間は通算期間としてカウントされず(クーリング)、6カ月未満の時には、前の契約期間もカウントされます。
※通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約が対象となり、それ以前からの有期労働契約分は、通算期間に含めません。
法律により規定された以上、今後は使用者の意思に関わらず、通算勤務期間が5年を超えた労働者からの申込みがあった場合には、使用者は申込みを承認したものとみなされ、その時点で無期労働契約が成立します。これにより、今まで契約更新の有無を心配していた労働者が安心して働ける環境が整う事が期待される一方で、企業はこの対応策として、5年に満たない期間で有期契約の更新を拒否するケースが増えるのではないか?という声も出ています。改正さえなければ、その後も更新してもらえたであろう労働者が、その場で職を失い、5年おきに仕事を転々としなければならない状況も予想されます。労働者の雇用安定を目的として制定された筈の改正労働契約法が、逆効果を生んでしまう可能性も否定できません。
Ⅱ:「雇止め法理」の法定化
有期労働契約は、使用者が更新を拒否した時は、契約期間の満了により雇用が終了しますが、これを「雇止め」といいます。過去の最高裁判例により一定の場合にこれを無効とする判例上のルール(雇止め法理)がそのままの条件で労働契約法に条文化されました。
Ⅲ:不合理な労働条件の禁止
有期契約と無期契約との間で、合理的な理由もなく労働条件を相違させる事を禁止しています。
労働条件には賃金や労働時間等の狭義の条件のみならず、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
施行期日については、Ⅱが公布と同時の昨年8月10日より、ⅠとⅢについては、25年4月1日より開始されています。 (斎藤 勝)