今号は消費税転嫁対策措置法の4つの柱のうちの「消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置」についてご説明いたします。
ここまで数回に渡り消費税転嫁対策措置法の内容についてご説明してきました。1997年の消費税率引き上げ時には引き上げ分の価格転嫁を取り締まる為の法律は、独占禁止法と下請法のみでした。多くの中小企業が消費税分を転嫁できずに苦しんでいたであろう状況下で、下請法違反で指導対象となったのはわずか4社。独占禁止法違反においては0社という状況だった様です。その為今回の法律により政府に行政指導の権限が与えられると共に、89年の消費税導入時に一定の効果が見られた下記カルテル容認を復活させ、中小企業の不満の高まりを防ぐ狙いです。内容は以下の通りとなっています。
平成26年4月1日以降に供給する商品又は役務を対象にした、事業者又は事業者団体が行う転嫁カルテル・表示カルテルが独占禁止法の適用除外となります。
(1)転嫁カルテル(消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為)
●事業者がそれぞれ自主的に定めている本体価格に、消費税額分を上乗せすること
●消費税額分を上乗せした結果、計算上生じる端数について、切り上げ・切り捨て・四捨五入等により合理的な範囲で処理すること。
(2)表示カルテル(消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為)
●税率引き上げ後の価格について、「消費税込価格」と「消費税額」とを並べて表示する方法を用いる事
●税率引き上げ後の価格について「消費税込価格」と「消費税抜価格」とを並べて表示する方法を用いる事
※税込価格や税抜価格を決める事は、独占禁止法の「価格カルテル」に該当し、今回の適用除外の対象にはなりませんので注意が必要なうえ、上記特別措置を適用するためには、公正取引委員会が定めた期間内にあらかじめ届け出る事が必要となります。
※転嫁カルテルについては、参加事業者の3分の2以上が中小事業である事が必要です。
【中小事業者の範囲】 |
資本金等の額(会社) 又は 常時使用する従業員数(会社又は個人) |
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製造業・建設業・運輸業 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
サービス業 |
5千万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5千万円以下 |
50人以下 |
政令で定める業種 |
業種毎に政令で定める金額以下 |
業種ごとに政令で定める数以下 |
上記以外の 業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
(斎藤 勝)