売上と費用のバランスを表す言葉に限界利益と損益分岐点というものがあります。
今回は私の学生時代のアルバイト経験を活かし、たい焼き屋さんを例にとってこの2つを考えていきましょう。
たい焼き屋X店はこんなお店です。
創業2年目、路地裏に1店舗を構えている。社長以外の従業員は固定給の店長が1名、時間給のアルバイトが3名。路地裏という立地であるため広告宣伝は必至で毎月定額のインターネットのクチコミサイトに登録している。販売単価は1個200円。
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まず、お店の費用・経費を「変動費」と「固定費」という性格の異なる2つの費用に分類します。
変動費とは売上原価など売上の増減に比例して発生する費用をいい、固定費とは売上の増減に関係なく発生する費用をいいます。
X店の変動費
小麦粉、卵、あんこなどの原材料費、稼働にかかる水道光熱費、包装費、アルバイトの人件費(時給制なので営業時間=売れる数量に応じて増減するものと仮定)
売上が上がればその分、原材を仕入れ(=原材料費増)、たい焼きを焼き(=水道光熱費増)、販売する(=人件費・包装費増)ために費用がかかります。その名のとおり変動していく費用です。
この変動費を売上から差引いた利益のことを限界利益といいます。
例えばX店が月300万円を売上げるために変動費が180万円かかるとすると、限界利益は120万円です。
限界利益を売上高で割ると限界利益率を算出され、この率を使って様々な損益分析をすることができます。
この場合だと、限界利益120万÷売上300万=40%となります。
X店の固定費
店舗家賃、導入したたい焼き機の減価償却費、クチコミサイトの広告費、社長の報酬、店長の人件費
固定費はたとえ売上がゼロでも必ず発生するものであることがお分かりいただけるかと思います。つまり売上高から変動費を差引いた利益(限界利益)が固定費以上でないと赤字になってしまいます。黒字転換するには固定費以上の限界利益になるだけの売上を上げなくてはなりません。この転換ポイントが損益分岐点です。
ではX店は1個200円のたい焼きを月にいくつ売り上げればいいでしょうか。
限界利益率40%、月52万円の固定費がかかるとします。
数量(個)
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4,500
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5,500
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6,500
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7,500
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売上高
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900
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1,100
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1,300
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1,500
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変動費
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540
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660
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780
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900
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限界
利益
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360
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440
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520
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600
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固定費
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520
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520
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520
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520
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利益
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▲160
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▲80
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0
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80
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売上高以下(単位)千円
520,000円(固定費)÷40%(限界利益率)=1,300,000円が損益分岐点売上高です。
つまり、利益がゼロとなるのは6,500個のときで、黒字経営するには月6,500個以上のたい焼きを売上げる必要がある、ということになります。
来年4月には消費税が8%になることもあり、販売価格や経費の見直しを考えている経営者の方も多いことと思います。過年度の業績や同業他社などを比較して、判断材料にしてみてはいかがでしょうか。
今回は掲載できませんでしたが、販売単価を上下させた場合、変動費である原材料費や人件費を増減させた場合、固定費を削減した場合等、色々な仮定で分析することができます。
詳しくはまたの機会に掲載していきたいと思います。
(石田 沙織)