● ゴルフ会員権・リゾート会員権の譲渡損失 所得控除除外の検討
先週の11月29日の日経新聞の記事によりますと、政府与党はゴルフ会員権やリゾート会員権の売却により生じた損失を所得控除の対象としないとする検討に入ったようです。
これまでゴルフ会員権やリゾート会員権を売却し損失が出た場合には、他の所得から損失分を差し引いて所得税を計算(損益通算)する事が認められており、節税手段として利用されてきました。所得税は、いくつかの控除項目が設けられており、収入金額から様々な控除金額を差し引いた残りの課税所得金額に応じた税率(課税所得金額が多いほど高い税率)を乗じで計算されます。
例えば年収600万円で、扶養が1人の場合、(※社会保険や生命保険料、その他控除は考慮しないものとする)年間の所得税額は約35万円になります。しかし、ゴルフ会員権の売却による損失が200万円あった場合には、所得税額は10万円弱で済みます。
この様に、会員権の損失を他の所得から控除する事によって節税になっていた訳ですが、これが今後、ゴルフ会員権を売却して損失が出たという状況は全く変わらないにも関わらず損失を他の所得から控除できず、税負担だけが増加するという可能性があるのです。
会員権の所有目的は個々によって様々ですので一概には言えませんが、この見直しは早ければ来年の譲渡分から適用される可能性がありますので、含み損を抱えたゴルフ会員権等をお持ちの個人で、今回の見直しの有無に関わらず近い将来売却を考えておられる方は、今年中の売却を検討した方が良いかもしれません。
● 消費税簡易課税制度のみなし仕入率 一部引き下げの検討
さらに日経新聞の11月30日の記事には、消費税の「簡易課税見直し検討」という見出しが掲載されました。消費税は原則、売上等に係る消費税額から仕入等に係る消費税を差し引いてその差額を納める事になっていますが、事務処理の煩雑さなどの理由から、課税売上が5000万円以下の事業者に限り、事業者の選択により、売上等に係る消費税額に、業種ごとに応じて定められている比率(みなし仕入率90%~50%)を乗じて計算した金額を仕入金額とみなして消費税を計算する簡易課税制度という制度が設けられています。
しかし、このみなし仕入率が企業の実態に比べ高く設定されているという結果が財務省の調査により明らかになりました。そこで、実態との乖離が大きいと判断された、「金融保険業」と「不動産業」の2業種について、みなし仕入率を見直す検討に入ったようです。
具体的には、「金融保険業」の現行みなし仕入率60%を50%に、「不動産業」の50%を40%に引き下げるという内容となっています。こちらも2014年度の税制改正大綱に盛り込まれる予定となっており、もし改正されれば、これまで簡易課税制度を選択適用していた上記2業種に当てはまる事業者にとっては、納税額の負担増となりそうです。
(斉藤 勝)