相続を円満に行うには早めの相続対策が不可欠ですが、相続対策は大きく、節税対策・納税資金対策・争族対策の3つに分類できます。
そのどれもが相続が発生してから慌てて準備できることは少なく、早めに計画を立てて長期的に実行していくことが成功の秘訣です。
そこで相続で困らないための節税対策、納税資金対策、争族対策の基本的な考え方についてみていきましょう。
- ☆節税対策
相続税の節税対策の基本は相続財産そのものを減らす、相続財産の評価額を圧縮する、相続財産の分割の仕方を工夫するなどの方法が考えられます。
1)生前贈与の活用 計画的に生前贈与を実施し、相続財産を減らす。(配偶者への贈与
孫への教育資金贈与・住宅取得のための贈与・暦年贈与等)
2)現金・預貯金から「モノ」に換える。(賃貸物件の取得等)
3)配偶者控除などの税額軽減規定を活用する。(配偶者の相続分を多く設定する)
4)相続財産の評価減規定を活用する(小規模宅地の特例等)
☆ 納税資金対策
相続税は申告と同時に金銭で一括に納付しなければならない場合が大多数です。
そのためには財産の流動性を高め、すぐに現金化できるようにしておくことが大切です。
1)資産の流動性を高める・・・可能な範囲で現金、死亡保険金等をもつことや財産は不動産のみといった偏った所有のしかたをしない。
2)生命保険の活用・・死亡保険金をかけることは節税の観点からも有効です。(非課税枠)
3)売却可能な資産の保有・・有価証券等の換金性の高いものでの所有することも大切です。
☆ 争族対策
相続人同士の争いは避けたいものですが、家庭裁判所に持ち込まれる相続相談の件数は年間18万件と10年前のおよそ2倍になっています。(司法書士年鑑より)そこで相続人同士の争いを避けるためにも、事前に取れる相続対策は行っておきたいものです。
1)財産を分割しやすい状態にしておく・・・相続財産が不動産だけなどといった場合、均等に分けるにも分けようがありません。(共有名義という手段はありますが、後々を考えるとあまりお勧めできません)現金その他で支払う代償分割という方法もありますが、相続人に多額の現金がなければ実現は難しいものです。あらかじめ財産を分割しやすい状態にしておくことが大切です。
2)安全・確実な公正証書遺言書を作成して各相続人に相続させる財産を具体的に指示しておく・・・離婚した前妻との間に子供がいる場合や特定の相続人に多く(又は少なく)渡したい場合、相続人以外の者に渡したい場合などには特に有効です。 (平林 明子)