●「経営者保証に関するガイドライン」制定の背景
経営者保証(社長の個人保証)には経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生等を阻害する要因となっているなど、保証契約時・履行時等において様々な課題が存在しています。これらの課題を解消し中小企業の活力を引き出すため、中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、今年の2月1日から開始されています。
●「経営者保証に関するガイドライン」の概要
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、
1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の破産しても残せる自由財産99万円に加え、年齢に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等が可能になることが期待されています。
●経営者保証に依存しない融資の条件
会社が金融機関に対して保証人なしで借入を申し込むには、下記のような経営状況であることが求められます。
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
法人から経営者への貸付金がある場合や、会社の利益がほとんど役員報酬や配当の形で社長に渡ってしまい、法人の資産・経理と経営者個人の資産・家計が一緒になっている中小企業は多いようですが、それを適切に分離することが求められます。
②財務基盤の強化
法人の収益力や資産で借入金を返済できると判断できる財務状況が求められます。具体的には、業績が好調で、返済するのに十分な利益やキャッシュ・フローを有しており、かつ、内部留保も十分にある法人である場合等です。
③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
融資を受けている法人は、金融機関に対して年1回の決算書を提出していると思いますが、決算書だけではなく、事業計画書や業績見通し、試算表、資金繰り表などを定期的に報告することが求められます。
(伊藤 淳二)