平成26年5月20日付日経新聞の朝刊1面に「中小融資の保証縮小 全額から原則8割に 政府検討」という見出しが躍りました。
政府は中小企業の融資が焦げ付いた場合に国などが肩代わりする公的信用保証を段階的に縮小する検討に入った模様です。2008年秋のリーマンショック後に特例として認めた全額保証を縮小することが柱で、約100業種を対象に保証率を危機前の原則だった8割に戻す方向で議論が進められているようです。
◆信用補完制度について
信用補完制度とは、「中小企業者、金融機関、信用保証協会の三者から成立つ信用保証制度」と、「信用保証協会が㈱日本政策金融公庫に対して再保険を行う信用保険制度」との総称をいい、中小企業金融の円滑化支援制度と言えます。
◆信用保証制度について
信用保証制度は、中小企業が支払った保証料を原資として保険を設定し、倒産など貸倒れが発生した時に全国の信用保証協会が金融機関の損失を肩代わり(代位弁済)する制度です。2007年10月から信用保証協会(8割負担)と金融機関(2割負担)とが責任を共有する責任共有制度が導入された経緯がありますが、リーマンショックや東日本大震災といった緊急事件を経て全額保証という状況が続いてきました。中小企業者約420万社のうち、約150万社が利用している制度で、信用保証が付いた融資残高は2009年度に約36兆円に膨らみ、2012年度もなお32兆円(融資総額の約14%)が残っています。
この制度変更が実現すると金融機関の審査が厳しくなる(金利が高くなる)ことが予想されます。本来、金融機関の貸付けが担保偏重とならず、金融機関自身にリスク評価(スコアリングモデル評価以外)と事業育成のノウハウが蓄積されていればよいのですが、現状そこまでのコンサルティング機能を発揮していないためです。
前号の「経営者保証のガイドラインについて」でもお知らせ致しましたが、対外的信用度を上げるためには、法人と経営者個人が明確に区分されているかどうか、内部留保(自己資本)が十分に蓄積されているか、などの情報発信が必要であり、経営の透明性確保のための決算書の信頼性向上がますます重要となってきます。
ただ制度がどのように変わろうとも「営業利益」を出せない企業は、社会に存続し得ない。そして金融機関との交渉そのものは、1円の営業利益も生み出しませんので、無駄な時間を費やすことは辞め、営業に集中することにより勝ち残れる経営(会社作り)をすることが先決であるという論理が成り立つ、いかがでしょうか。
(久保 康高)