今年の夏は一度は冷夏と発表されたものの、気温が平年並みか平年より高くなることが見込まれ、熱中症による労働災害が多く発生することが懸念されます。
厚生労働省がとりまとめた平成25年の「職場での熱中症による死亡災害の発生状況(業種別)」によると「製造業」7人(平成24年4人)、「農業」1人(同0人)、「運送業」1人(同0人)、「その他の事業」9人(同2人)で増加し、「建設業」9人(同11人)、「林業」1人(同2人)で減少、「警備業」2人(同2人)で同数となっています。
つまり昨年の職場での熱中症による死亡者は30人と、平成24年よりも9人多くなっています。
死亡した30人の状況をみると、「WBGT値*(暑さ指数)の測定を行っていなかった(28人)」、「計画的な熱への順化期間が設定されていなかった(30人)」、「定期的な水分・塩分の摂取を行っていなかった(14人)」、「熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病を有していた(14人)」など、基本的な対策が取られていなかったことが分かります。
*WBGT値・・・気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数。
厚生労働省では、職場での熱中症の予防について、
・WBGT値を測定することなどによって、職場の暑熱の状況を把握し、作業環境や作業、健康の管理を行う
・熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)を計画的に設定する
・自覚症状の有無にかかわらず、定期的に水分・塩分を摂取する
・熱中症の発症に影響を与えるおそれのある、糖尿病などの疾患がある労働者への健康管理を行う
などの具体的な対策を定めており、平成26年の職場における熱中症予防対策については、平成25年に死亡災害が多く発生している建設業及び建設現場に付随して行う警備業並びに製造業を重点業種として実施することとし、その重点事項等について都道府県労働局長あてに通達を発出しました。
事業者の責任という観点から、熱中症を発生させたことが労働安全衛生法違反になると法的責任が発生することも考えられます。屋内では働く方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、労働安全衛生規則第617条(発汗作業に関する措置)では「 事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。」とあるなど、企業として対策をしておくことは重要であるといえるでしょう。
(廣島 三津子)