中小企業庁委託のアンケートによると法人成り(個人事業主の方が会社設立して事業を行っていくこと)をする理由として「信用力が上がるため」、「税務上のメリットがあるため」という回答が多くみられます。(2014年版中小企業白書より)
具体的には下記のようなメリット・デメリットがあります。
法人のメリット
●事業年度を自由に設定できる
個人事業主の場合には1月~12月の暦年で申告をすることが決まっています。法人の場合は自由に事業年度を設定できるので、繁忙期と決算期をずらすことができます。
●資金調達、取引、人材確保等の面で信用力がある
法人の場合登記がされること、また財務状況が把握しやすいといった理由で個人に比べて社会的信用力があります。
●責任の範囲が限定される
事業が失敗した場合には個人事業主の場合個人の財産までその責任が及びますが、法人の場合には有限責任といい、出資額までに限られています。(役員や会社の借入に対して個人保証を行っている場合等を除く)
●欠損金の繰越が9年間可能
過去の赤字は翌年以降の黒字と相殺して税額を計算することができますが、個人事業主の場合は繰越期間が3年間となっています。
●節税の幅が広い
例えば役員給与の設定により、会社での儲けを個人の所得に分散することで節税が可能です。その他にも生命保険の活用、退職金の支給、社宅家賃の設定などでの節税ができます。
●税率が一定である
個人の場合に課される所得税は累進課税が採択されているため儲けが大きければ大きいほど課される税率が高くなり税金の負担が増えます。一方、法人税率は原則として一定です。
法人のデメリット
●設立に費用・時間がかかる
定款認証や登記を行うため、最低でも25万円位の費用がかかります。
●社会保険に強制加入となるため人材募集の面ではメリットにもなるが、会社としては保険料の負担が増える
●赤字でも毎年最低7万円(資本金1千万円以下の場合)の税金がかかる
●帳簿作成等の事務負担、コストが増える
●任期に応じて役員登記をしなければならず、費用がかかる
新たに開業する場合でも、個人として行うか会社として行うかメリット・デメリットをみて考えていきましょう。
(石田 沙織)