「経営理念」という言葉は知っているが、「何のためにつくるのか?」、「あれは大企業の話で中小企業には関係ないのではないか?」と思ってらっしゃる経営者の方は多いかもしれません。確かに初めから、「理念」と呼べる様な高い志を持って会社を設立される方は少ないかもしれません。実際に経営理念などなくても、これまで何の支障もなく会社をやってきている・・というご意見も当然あるでしょう。
経営理念とは、社長の思いを文字におこし、誰の目にも見える様にすることによって、会社に関わる全ての人達が一丸となって同じ方向へ進む為の道しるべであり、基礎となるものです。会社が苦境に面した時、経営判断に迷いが生じた時、もう一度本来の姿に立ち戻る事ができる為の指標となり、そこには会社の存在している理由・目的が明確化されている必要があります。
~会社はさしずめ大きな船~
今、まさに大海原へ航海に出ようとしている船があります。社長はその船のキャプテンです。必要な乗組員を集め、必要な食糧も積み込みました。さぁ船出というタイミングで、キャプテンである社長が、船を出した目的や行き先を決めていなかったらどうなるでしょう?それを聞いた乗組員はどう思うでしょうか?自分たちのやるべきことが見つからないまま、ただただ途方に暮れる事でしょう。極端な例かもしれませんが、会社の経営も、目的と方向性がきちんと示されなければ、個々がバラバラの行動をとってしまい、違った方向へ進んでしまいます。
~ある会社の社内会議にて~
私がある日、顧問先様の社内会議に参加させていただいた際、社長より従業員さんに向けてミッション(使命)についてのお話がありました。ミッションと経営理念とは密接な関係があります。顧客のニーズを的確に捉え、「何のため?」「誰のため?」と自社や自身の存在する意味を自問自答し、その結果として導き出された使命を達成していくために、「会社としてどうあるべきか?」という全ての根底となる考え方を明文化したものが経営理念になります。
ただ目の前にある業務を機械的にこなすだけでなく、その業務を通じて「誰が喜んでくれるのか?」「何故必要としてくれているのか?」を理解する事で、全く同じ業務内容でも、結果には大きな違いが出てくる事でしょう。
会社運営はチームプレーであり、社長1人だけで会社を経営する事はできません。社内だけに限った事ではなく、たとえ従業員がいなくとも、必ず何らかの形で協力してくれる取引先がいらっしゃる筈です。物事を始めるのに遅すぎるという事はありません。まさに今から始めてみてはいかがでしょう!その方達に社長の思いを伝える事が出来たならば、必ずや良い方向へ進んでいく事が出来ます。
(斎藤 勝)