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遺言における予備的遺言と付言事項

公正証書遺言の有効性・重要性は何度かお話してきました。遺言自体は遺言者自身の意思で作成されるもので、大まかな構成は、遺言者の財産の分け方を指示する本文、遺言者より先に相続人(又は受贈者)が亡くなった場合を指示する予備的遺言、遺言者の希望を伝える付言事項、となっています。もちろん本文だけで完結することもできるのですが、予備的遺言・付言事項は共につける方が多数となっています。

 

1)予備的遺言

予備的遺言、聞きなれない方も多いかと思います。

子供がない夫婦の場合を見てみます。(相続人は妻と兄弟姉妹です。)

遺言がなくて夫が亡くなった場合、妻の相続分は3/4、残り1/4は夫の兄弟姉妹に法定相続分の権利が生じます。主な財産は二人で生活していた不動産のみなどという場合、妻は住んでいる不動産を売却して兄弟姉妹に財産を分けなければなりません。そんな悲劇を避けるためにも遺言が有効になります。兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、夫が死亡したら財産はすべて妻に、また妻が死亡したら財産はすべて夫にとの遺言があれば実現できるのです。

ただ遺言作成時にはどちらが先に亡くなるかは不明です。せっかく作った遺言も財産を相続する人が遺言者より先に死亡してしまっては残念ながら無効になってしまいます。それを防ぐ手立てとして予備的遺言があります。

例えば万一遺言者である夫より先、もしくは同時に妻が死亡してしまった場合は、可愛がっている兄の子供(甥)に財産を遺贈する。などの記載をしておけば、この遺言自体が無効になることはありません。この部分が予備的遺言です。予備的遺言は法的に認められているもので、勿論妻が生きていれば夫の財産を全て相続することができます。

 

2)付言事項

前回でもご紹介しましたが、遺言者の気持ちを表現できる部分が付言事項です。夫婦相互遺言の場合にはあまり必要性を感じませんが、遺言で財産を分ける際に、遺留分が想定される場合では、法的な効果は無いのですが、これがあくまでも遺言者の意思であり、このように分割することが望みである。よって遺言を見た相続人の間で諍いが起きないように願っているとの遺言者の意思を最後に付け加えることによって、相続人に遺言者の想いを届けることができるのです。

遺言は遺言者の最後の意思表示です。ご自身の死後、相続人間で争いが絶対に起きないなどと自信のある方は、大変お幸せです。しかし大多数に大なり小なりの諍いが起きてしまうのも現実です。相続を争族にしないために出来ることが遺言の作成ではないでしょうか。             

(平林明子)

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