事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。
減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産には該当せず、非減価償却資産といいます。非減価償却資産は取得価額を資産に計上し、減価償却等は行わず、売却又は除却等をするまでその一部を必要経費とすることはありません。
この非減価償却資産のうち美術品等(絵画や彫刻等の美術品のほか工芸品などが該当します。)が減価償却資産に該当するのか非減価償却資産に該当するのかの判定についての取扱いが変わりました。
(変更前の取扱い)
① 美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作による作品であるか
② 取得価額が1点20万円(絵画にあっては1号あたり2万円)以上であるか
により判定していました。
しかしながら、美術関係の年鑑等は複数存在しその掲載基準がそれぞれ異なること、また、20万円という金額基準は減価償却資産かどうかを区別する基準としては低すぎるのではないか。といった指摘があったことから以下のように取り扱いが変わりました。
(変更後の取り扱い)
① 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値を有し代替性のないもの
② ①以外の美術品等で取得価額が100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかであるものを除く)
※ 平成27年1月1日以後に取得したものについて新しい基準が適用されます。
平成27年1月1日より前に取得した美術品等について
今回の通達改正は過去に遡って資産区分の変更を行うものではありませんので、改正後の通達の取扱いにより資産区分を減価償却資産へ変更する美術品等については、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度から減価償却を行うことになります。この場合の償却方法は、その美術品等を実際に取得した日に応じて定額法、定率法等によることになりますが、取得日を適用初年度開始の日とみなすこととして定額法又は200%定率法を選択することができます。
また、中小企業者等にあっては中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(30万円未満の美術品等を少額減価償却資産として即時償却)を適用することもできます
ただし、今まで減価償却していなかった美術品等を減価償却資産として扱うと償却資産税に影響します。
減価償却資産として処理しなければ償却資産税は課税されませんが、減価償却資産とした場合には償却資産申告書にて申告することになり償却資産税が課税されることになるので注意が必要です。
(水田 裕之)