平成26年12月10日号で成長戦略を考えるツールとして「アンゾフの成長マトリックス」をご紹介させて頂きました。また現在開催中の「経営を考える勉強会」のツールとしても利用していますが、経営者は無意識のうちにこの枠組みで事業を捉え、考えていることを確認できました。このツールは、成長・拡大戦略としてM&Aを検討する場合にも応用できますので、その考え方をアンゾフ流に置き換え、整理してご紹介させて頂きます。
今後の成長ベクトルを「市場・顧客」と「製品・サービス・技術」の2軸で考えた場合、事業戦略は、以下の①~⑤のパターンに分類されます。
製品・サービス・技術 |
新規 |
③事業アドオン戦略
(自社の既存・製品・サービス等に組み合わせる・加える等によってさらに付加価値を高めようとするもの) |
④隣接業種進出戦略
(自社がこれまで取り組めていなかった領域へと、一気に進出を図るもの。関連性の高い隣接業種の場合、飛び地へと一足飛びに進出する場合がある)
※完全異業種進出戦略(多角化)
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既存 |
①バリューチェーン強化戦略
(自社の川上・川下へ進出することで、垂直方向でのコントロールを強めるもの)【会社の現状】
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②エリア拡大戦略
(これまで自社が進出できていなかったエリアに対して、顧客や販路等の獲得を目指すもの) |
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⑤切離 ・撤退 |
既存 |
新規 |
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市場・顧客 |
①バリューチェーン強化戦略の垂直方向の展開というのは、自社が販売業の場合、自社の仕入れ先や外注先(アウトソース先)の事業を自社に取り込むという意味です。そう簡単な話ではないと思いますが、何でもかんでも自前主義(内製化)だと時間がかかり過ぎる(スピード感がない)というのがデメリットであることを理解した上で、ある程度の知見を持った分野について検討することが重要です。一方、②のエリア拡大戦略は水平方向の展開と言います。③の事業アドオン戦略は、メディア媒体の販売業の場合、バックエンド商材(利益商材・本命商材)に加えて、フロントエンド商材(集客商材・入口商材)を品揃えし、顧客の購買行動を促すマーケティング活動からも検討可能です。マネジメントの父ピーター.F.ドラッカー教授は、「マーケティングの理想は、販売(営業)を不要にすることである」と述べているほど、マーケティング活動は重要です。
以外にも⑤の発想もとても大事でシェアや競争力が低いなど優先度の低い事業はカーブアウト(切り離し)して売却してしまうという戦略もあります。
経営トップには「成長戦略を示し実行する」ことが強く求められております。組織全体としてのSWOT分析を行った上で、たとえ成熟市場下であっても、どういう会社・人・グループと提携したら相乗効果(シナジー効果)が得られるかという視点で検討することがとても大切です。
(久保 康高)