管理職になると残業代がつかない、という話は良く耳にします。しかしながら、労使双方で合意していたとしても、労働基準法上の管理監督者として認められなければ、時間外割増手当(いわゆる残業代)が支払わないと違法となります。
管理監督者として認められるための要件を満たしていない管理職は「名ばかり管理職」と呼ばれます。
賃金債権の時効は2年であるため、「名ばかり管理職に時間外割増賃金や休日手当が支払われていなかったため、遡って過去2年分の未払い賃金が請求された」という裁判例もあります。
管理職とは、会社という組織上の位置づけであるのみで、管理職であるからと言って、ただちに労働基準法上の管理監督者として認められるわけではありません。
今回は、労働基準法上の管理監督者に関する考え方と4つのポイントについてご説明します。
労働基準法 では、「事業の種類に関わらず、監督もしくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」)等については、労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しない」と定められています。
管理監督者は、一般的に、部門長や工場長等、労働条件の決定、その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者を言いますが、名称にとらわれず実態に即して判断すべきとされています。
~管理監督者と認められるための要件~
管理監督者に該当するか否かは、実態を総合的に勘案して最終的に判断されます。次の4つのキーワードで、自社の管理職が労働基準法上の管理監督者として認められるかどうかをチェックしてみましょう。
※ ×・・・管理監督者として認められない例
1. 職務内容
管理監督者は、労働条件の決定その他、労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間・休憩・休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している必要があります。
×管理業務と比較し、接客や清掃等、他の従業員と同様の業務が大部分を占めている。
2. 責任と権限
労務管理について経営者と一体的な立場にあると言えるためには、経営者から労働時間等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を委ねられている必要があります。
× 課長やリーダーといった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少ない。
× 決定権が無く、上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎない。
3. 勤務の態様(状態)
時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にあり、労働時間等の規制になじまない勤務状態であることが必要です。
× 営業時間に拘束され、出退勤の自由がない。
× 勤務時間の定めがあり、毎日タイムカードを打刻している。
× 日常の就労状況(遅刻、欠勤、早退など)が査定の対象となっている。
4. 待遇
職務の重要性から、定期給与・賞与・その他の待遇において、一般労働者と比較してその地位にふさわしい相応の待遇がなされていなければなりません。
× 通常の従業員としての賃金以外の役職手当等の手当は支払われていない。
× 一般従業員と比較して、待遇がそれほど良いとは言えない。
(水田 裕之)