税理士・会計士のグループでエストニアの会計事務所(首都タリン所在)を訪問した。目的はエストニアが、すでに15年前から国民ID制度(日本のマイナンバーに似た制度)を導入し現在に至っているので、その普及状況から、来年から始まる日本のマイナンバー制度の今後を垣間見ることができるのではないかと考えたからであった。
エストニアはバルト三国の一つで1991年に旧ソ連から独立、EUに加盟していて、通貨はユーロである。人口は約134万人で国土の面積は我が国の九州程度の大きさしかないが、一人あたりの面積に直すと相当大きいことになる。観光客が年間約600万人訪れるそうで、我々が行った首都のタリンの街を見学してみたが、世界遺産である中世の歴史ある街並みに華やかな服装の人々が歩いている、おそらくは観光客がほとんどではないかと思われる。ガイドさんの説明ではエストニア人は物静かでコツコツ型でまじめな気質の人が多く日本人にはとても合うということだが、なんとエストニアに在住している日本人は100人程度で、ビジネスをしている人は10人に満たないそうだ。
さて、今回の訪問目的のエストニアの国民ID制度(日本のマイナンバーに似た制度)についてですが、旧ソ連からの独立以後目立った産業がなかったエストニア政府がいち早くICT(情報通信技術)を普及させるべく国策として国民ID制度の導入を進めた。そして初期のシステムを2000年に完成させ2002年からIDカードの発行(15歳以上の国民は所有が義務)を始めたことでオンラインでの国民ID制度の普及が進み現在に至っている。現在もIDカードによるサービスは増え続けており、行政手続きの99%以上がオンラインで完結でき、官民3000以上のサービスに利用されている。
●IDカードの活用事例は以下の通り
・身分証明証 ・健康保険証 ・運転免許証 ・EU地域内ではパスポート ・様々な店舗の会員証(ポイントや割引が受けられる)
オンラインで利用できることは
・税金の申告 ・住民登録 ・医療データ ・お薬手帳 ・病院の予約 ・会社の登記(登記事項がオンラインで閲覧も可能) ・不動産登記 ・学校制度(親が子供の成績や宿題の進捗状況を見られる)・求人案内の応募 ・ネットバンキング ・ネットショッピング ・選挙の投票・・・
●セキュリティー(プライバシーの保護、情報漏えい)の問題
エストニアは国民ID制度の導入から15年が経過したが、IDカードを悪用した犯罪が社会問題化することもなく、セキュリティーは安定しているそうだ。その背景には ①同国の政府が電子政府を自任し、法整備と高度な技術でセキュリティー対策が行われている ②オンラインを利用するにはカード、ID,電子サイン又は暗証番号の3つが必要でカード番号が知られてもそれを利用できないからである。
いかがでしょうか、日本のマイナンバー制度の将来を垣間見ることができたでしょうか?
(廣島清量)