相続が発生して相続人の中に高齢の相続人がいらっしゃるケースが良くあります。
例えばご主人様が死亡して相続人は奥様と三人の子供、特に遺言は無く、財産の分け方に遺産分割協議を行わなければならない、しかし被相続人の奥様に痴呆の症状がみられ、自分の意思を反映した遺産分割協議ができない。こんな場合は他の相続人で勝手に遺産分割をしてもいいのでしょうか?
答えはNOです。遺産分割協議は必ず相続人全員の合意が必要なのです。でも自分の意思を持たない(意思表示をすることが出来ない)相続人がいた場合にはどのように遺産分割協議を成立させたらよいのでしょう。
このような相続人の場合は、成年後見制度を利用して、家庭裁判所にて、成年後見人等を選任してもらう必要があります。
ここで簡単に成年後見制度について説明いたします
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。私たちを取り巻く社会は、契約で成り立っていると言っても過言ではありませんし、私たちが生活する上で、さまざまな利益を享受するには、契約する能力、すなわち判断能力が備わっていなければ満足な利益をうけることはできないといえます。逆に、判断能力の不自由な方々は、不動産の管理や預貯金の預入払い戻しなど財産を管理したり、身の回りの世話のために介護保険を利用してのサービスや施設の入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりすることが難しい場合が少なくありません。現に必要があっても、判断能力が不十分なため、自分のみの力では正しい選択ができなかったり、あるいは、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。成年後見制度はこのような精神的障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。(日本公証人連合会監修 任意後見のすすめより一部抜粋)
選任された成年後見人は被後見人の利害を考え、代りに遺産分割協議に参加して被後見人に不利益がないような分割を主張することになります。多くの場合は、法定相続分が侵されないことが重要になると思われます。
(平林 明子)