会社の経営における「人」の効率を見る尺度として労働生産性と労働分配率があります。
労働生産性とは従業員一人あたりが生み出した付加価値額を言い、次の式で計算します。
労働生産性=付加価値額÷従業員数
※従業員一人あたりの労働時間にばらつきがある場合には付加価値額÷総労働時間で計算し、時間当たりの生産額を見ることも必要です。
付加価値額とは会社が事業活動によって新たに生み出した価値を意味しますが、大まかには粗利益とお考えください。
労働生産性が高い場合は投入した労働力が効率的よく効果的に活用されていると言えます。
中小企業白書(2011年版)によると中小企業の平均は一人あたり524.7万円ですが、一人あたり800~1,000万円あるのが理想的です。
労働分配率とは付加価値額に占める人件費の割合を言い、次の式で計算します。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100
つまりは会社が獲得した粗利益をどのくらい労働者に分配しているかを示しています。
この場合の人件費には給与や賞与だけでなく社会保険料などの法定福利費や福利厚生費なども含めた金額を言います。
一般的には40~60%が適正であると言われていますが、業種やビジネスモデルによって異なりますので、同業他社や自社の過去~現在との比較をすることが有効です。この数値は一概に高ければ良い、低ければ悪い、といったものではありません。労働分配率が高いということは、会社の給与水準が高いということですが、一方で十分な利益を稼ぎ出せていない=人材を効率的に活用できていない可能性もあります。逆に労働分配率が低いということは会社のコストは抑えられていると言えますが、従業員の不満や士気の低下に繋がっているかもしれません。どのくらいの給与が適正なのか?の判断材料になる尺度です。
労働生産性を上げるためには「付加価値額≒粗利益を増やす」または「従業員数を減らす」しかありません。しかし粗利益を増やすために売上高を上げようと決めても、もっと人材が必要になるかもしれませんし、従業員数を減らして効率を高めようとしても労働力が減ってしまってはそれまでの付加価値の維持が出来ないかもしれません。労働分配率についても同様で、単純に見えてそれぞれの要素が絡み合っていますので、経営戦略や事業の仕組み、社内環境の見直しが必要になるのではないでしょうか。
つまりこの2つの尺度は経営判断に欠かせない要素のひとつであると言えます。
(石田 沙織)