公正証書遺言の重要性については、事務所通信を通して何度もお話してまいりましたが、今回はせっかく作成した遺言を遺言者の意思どおり実現させるための方法の一つについてお話しいたします。
例えば遺言者の配偶者はすでに亡くなっており、相続人は子供が3人いたとします。子供のうち、長男と同居しており、長い間遺言者や、亡き妻の介護などで苦労を掛けてきたので、遺言者の財産はすべて長男に相続させたいと思っています。幸いなことに、二男も三男も財産はいらないと言ってくれています。しかし、遺言者の死後、もめてしまわないとは限りません。なぜなら、二男・三男には遺留分(法定相続分の1/2を取得できる権利)があるからです。遺言者の生前には、相続権の放棄は認められておりません。
このような場合は、遺言者が長男にすべての財産を相続させるという遺言を作成し、二男・三男には遺留分放棄をしてもらうと良いでしょう。
相続開始前の遺留分の放棄については、家庭裁判所の許可を得た時に限り認めています(民法1043条第1項)。
民法は相続開始前の遺留分放棄を無限定に認めると放棄が遺留分権者の自由意思に基づいてなされていない場合も認めてしまう恐れがあるため、家庭裁判所の許可を遺留分放棄の効力要件としたのです。
今回のケースですと、二男・三男の意思に基づいて遺留分放棄をする必要があります。相続開始前の遺留分放棄許可の申立を受けた家庭裁判所は、申立が二男・三男の自由意思に基づくものかどうか、放棄理由に合理性・必要性があるかどうか、放棄に代償性があるかどうかを考慮して、許可あるいは却下の審判をします。
遺留分放棄は、遺留分権利者の被相続人に対する単独の意思表示でなされます。申立てができるのは、遺留分を有する相続人であるため今回のケースでは遺言者の子3人です。申立ては二男・三男がそれぞれ居住地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
亀戸・錦糸町相続サポートセンターでは、このような場合など、様々なケースも考慮し
公正証書遺言の作成はもちろん、その他のお手伝いもいたしております。
お盆休みで家族がそろうこの時期、ご自身の財産をどのように相続させるかをお考えいただく良い機会にされてはいかがでしょうか。
(平林 明子)