数ある助成金の中でも会社と従業員双方にメリットがあり、就業規則の作成・変更等に関しても私共がお手伝いのできる助成金として業務改善助成金という厚生労働省の助成金をご案内します。この業務改善助成金は中小企業・小規模事業者が設備の導入等をすることで業務の効率化をはかり会社の生産性を向上させることを目的としています。また、業務効率化が達成され結果として従業員の勤務時間が短縮されても賃金が低下しないよう、時間給または時間換算額の引き上げも要件となる助成金です。
まず、受給するには「事業実施計画書」を作成し、計画の中で具体的に「賃金引上計画」と「業務改善計画」を定め労働局へ提出し計画確認の承認を受けます。
加えて就業規則で事業場内最低賃金を定めます。例えば「第○条当該事業場における最も低い賃金額は、時間給または時間換算額1,000円とする」という条文を追加します。そして業務効率化のための設備の導入に関し経費の支出をします。もう一つの経費支出目的「専門家からのアドバイスを受ける」の専門家とは、特定の専門家を指すわけではなく、普段から経営アドバイスを受けている税理士や経営コンサルタントも含まれます。無論、私共ひろしま会計も対象となります。
手順をまとめますと以下の4つです。
①労働局へ事業実施計画書を提出し計画決定の承認をうける
②生産性向上に資する機器・設備などの導入または専門家のアドバイスを受け業務改善を行う
③就業規則に規定して事業場内最低賃金を引き上げる
④③に基いて引き上げ後の賃金を支払う
上記①~④の取り組みは労働局での計画の承認を受けた後に実施することが必要です。
その他、重要な要件として解雇者を出していないことおよび引上げ後の賃金を支払っていること、受給後(概ね6ヶ月後)にその後の実施報告をすることに予め同意していることがあります。
次に、助成額です。賃金引上げ額コースに応じて区分された助成率(助成の上限額)があります。人数要件等で助成率に違いがある場合もありますが概ね以下のとおりです。
◇「現行基本コース」 60円以上引上げで助成率2分の1(上限100万円)
◇「引上げ額選択コース」 90円または120円以上引上げで助成率10分の7(上限150万円)
「引上げ額選択コース」を選んだ企業が、助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における「生産性」がその3年前に比べ6%以上伸びているときには助成割合が増します。
生産性を判定するには厚生労働省ホームページにある「生産性要件算定シート」を用い、該当する勘定科目の額を損益計算書や総勘定元帳の各項目から転記することにより算定できます。
28年度末を迎え、現在実施されている助成金も、次年度に同じ条件で実施されるのか、要件等の変更がなされるのか未だわからない点も多いです。現時点では、この業務改善助成金について内容変更の有無はわかりませんが29年度も引続き実施されるという話です。
社会保険労務士 長壁 薫