平成27年年1月から始まったマイナンバー制度では、大きく3つの使用用途(社会保障・税・災害対策)が示されていました。しかし、平成27年9月に成立した改正個人情報保護法及び改正マイナンバー法においては金融・医療分野等での利用範囲拡大といった改正が盛り込まれています。
施行は平成29年5月30日からで、実際の運用までの準備がスタートします。
~預貯金口座への付番~
現在のマイナンバー法の下では、個人が銀行などに保有している預貯金口座について、マイナンバーを使って管理することは行われていません。
マイナンバー入りの書類を行政機関に提出する場合など、法令上マイナンバーを取り扱う義務がある場合以外は、マイナンバーを利用することができないためです。
したがって、行政機関に提出書類がない現時点では、銀行などが、個人が保有する預貯金口座について、マイナンバーを収集して利用することはできません。
しかし、今回、税法(国税通則法、地方税法)が改正されることで、銀行などは、個人の預貯金情報を、マイナンバーをキーとして検索することができる状態で管理する義務を税法上負うことになります。
そして、これと併せて、マイナンバー法、厚生年金保険法、国民年金法などが改正される結果、銀行などが税法上の義務としてマイナンバーをキーに管理している個人の預貯金情報を、税務署、地方自治体・年金事務所等、預金保険機構が、①国税・地方税の税務調査、②社会保障制度における資力調査、③預金保険に関する預貯金口座の名寄せにおいて、銀行などに対してマイナンバー付きで預貯金情報を照会し、銀行などはこの照会に対して回答する、といった形で利用することになります。
以上の預貯金口座への付番に関する改正法の施行は平成30年1月を予定していますが、その時点では、個人が銀行などに対してマイナンバーを告知する義務はありません。あくまでも、銀行がマイナンバーをキーにして検索することができる状態で管理する義務を負うにとどまります。
個人が銀行などに告知することは、預金口座に対する付番状況を踏まえて必要があると認められるときは、平成33年を目処に義務化することが検討されています。
~医療等分野におけるマイナンバーの利用拡大~
健康保険組合などが行う特定健康診査の情報について、被保険者が転職などによって健康保険組合を変えた場合でも、マイナンバーをキーにして引き継ぎができるようになります。
また、地方公共団体における予防接種履歴について、引っ越しをして転居した場合でも、転居前の地方公共団体に対し、問い合わせ(情報連携)ができるようになります。
~地方公共団体の要望を踏まえたマイナンバーの利用拡充~
特定優良賃貸住宅の管理の事務でマイナンバーが利用できるようになることや、条例によって定める事務で情報提供ネットワークシステムが利用できるようになるなどの改正が行われます。後者により、マイナンバーによる情報連携を、法律ではなく条例によって拡大する大きな仕組みができたことになります。
(水田 裕之)