アベノミクスの成長戦略「日本再興戦略」ではIOT、人工知能(AI)、ロボット、ビッグデータなどの革新的技術を活用することによる「生産性向上」が大きなテーマとなっております。今まで本稿では何度も労働生産性について取り上げてきましたが、第四次産業革命に向けて製造業など資本集約型の業種が考慮に入れなければならない指標(労働装備率)があります。
労働生産性=付加価値(粗利)/ 従業員数
=付加価値(粗利)/ 売上高×売上高 / 従業員数
上記の一般的な労働生産性の公式をさらに分解すると以下の算式になります。
固定資産 / 従業員数(労働装備率)×売上高 / 固定資産(固定資産回転率)
×付加価値 / 売上高(付加価値率)
労働装備率は、一人当たりどれくらいの固定資産が使われているかを示しています。労働装備率の上昇は労働生産性を飛躍的に向上させます。固定資産回転率は、投入した固定資産が有効活用され、売上という名の果実(お金)の回収にどの程度使われているかを示します。固定資産は持ったら必ず付加価値(売上)に結びつけなければならないため、固定資産回転率×付加価値率は設備生産性と言い換えることもできます。
労働生産性向上のポイントは、設備、AI、技術(ノウハウ)など有形・無形を問わず固定資産を購入し、それをうまく事業に活用することです。人手不足で人を採用・定着させることが難しい環境下であるならば設備投資やIT化・ロボット化などは労働生産性を高めるためには必要な施策になってきます。
一方で、サービス業など労働集約型・知識集約型(今後部分的にAIに置き換わっていく可能性も大いにあり得る)の業種で設備・IT・AIばかりに頼っていられないという業種の会社は以下のような施策が必要となってきます。
◆会社の存在意義(レゾンデートル)、使命(ミッション)、真の価値(コア・バリュー)、経営目的、目標を明確化、明文化する。◆社長の想い・方針をきちんとスタッフに伝達し、理解させる。
◆その上で、AI導入・活用に抵抗のないスタッフを育てる。
=無駄な業務行動やムラ(時間や労力のバラツキ)が減る
◆部門の垣根を越えて情報を共有化する。
◆各スタッフへの期待行動を明確化、明文化する(人間は期待されると嬉しい動物)。
◆OJT、Off-JTを問わずキャリアアップ、能力向上のための刺激を与える。
◆仕事をマルチ化(多能化)する。
◆安易に人を増やさない。安易に欠員補充をしない。
◆健康状態やライフステージを踏まえた上で、人別・お客さん別の人時生産性(1時間当たりいくらの粗利を稼ぐかという指標)を算出し、生産性の低いスタッフにはやむを得ず辞めてもらうかあるいは適所に配置転換する。
※人時(にんじ)生産性=付加価値(粗利)/ 総労働時間
◆集中しなければならない仕事をしている時間帯は電話取り次ぎを禁止する。
税理士 久保 康高