以前、日本経済新聞の記事に、以下のような見出しが掲載されていました。
【 大廃業時代の足音 中小「後継未定」127万社 】
内容を見てみますと、中小企業の廃業が増えており、しかも、廃業する会社のおよそ5割が経常黒字という異常な状況との事です。理由としては、後継者難から会社をたたむケースが多く、2025年に6割以上の経営者が70歳を超え、経済産業省の分析によると、現状で127万社が後継者不在の状況にあるそうです。
こういった事業の承継に関する問題については、ご承知のとおり税制面でもその解決を後押ししています。いわゆる「事業承継税制」です。
事業承継税制とは、相続や贈与による現経営者から株式を承継する際の、当該株式に係る相続税(発行済議決権株式の2/3を上限に80%)及び贈与税( 同左 100% )の軽減を図るというもので、当初から使い勝手が非常に悪く、平成20年度では利用件数がわずか57件というものでした。※以下、中小企業庁執行状況データベースより
その後、改正により平成25年4月からは・・
- 事前確認の廃止(手続きの簡素化)
制度利用の前に、経済産業大臣の「事前確認」が必要 ⇒ 不要へ
これにより平成21年~平成26年までは毎年増減があるものの、平均利用件数で173件
そして平成27年1月からは主に・・
- 親族外承継の対象化(親族以外の後継者も対象)
当初、後継者は現経営者の親族に限定 ⇒ 親族外も対象
- 雇用8割維持要件の緩和
雇用の8割以上を「5年間毎年」維持 ⇒「5年間平均」で評価
- 役員退任要件の緩和
現経営者は、贈与時には役員を退任 ⇒ 代表者退任が要件に(有給役員として残留可)
以上の様な改正を繰り返し、平成27年度は利用件数が約500件と、過去平均の2倍以上まで増加した様です。
近年、倒産件数が減少している一方で、休業・廃業件数は横ばいという実態から、平成30年税制改正では、更に制度の拡充が予定されています。詳しい内容はまだ発表されていませんが、税額軽減の対象となる株式数の上限撤廃(現行は2/3)や、8割以上の雇用要件の緩和などが盛り込まれる予定になっている様です。
(斎藤 勝)