中小企業経営者の高齢化が急速に進展する中で、円滑な世代交代を通じた生産性向上は、待ったなしの課題となっている。そこで今回、従来の事業承継税制について、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む税制改正が行われた。
事業承継税制は中小企業の先代経営者から贈与・相続により後継者が取得した自社株式に対応する贈与税・相続税の納税が、猶予及び免除される制度で、その適用要件について更に以下のような緩和措置が設けられた。
内容 | 原則制度(継続) | 特例制度(創設) |
納税猶予対象株式 | 発行済議決権株式総数の3分の2 | 取得した全ての議決権株式 |
納税猶予税額 | 対象株式に係る贈与税は全額
対象株式に係る相続税は80% |
対象株式に係る贈与税は全額
対象株式に係る相続税は全額 |
贈与者・被相続人の要件 | 代表権を有する又は有していた先代経営者からの承継株式が対象 | 複数株主(親族外を含む)からの特例後継者への承継も対象 |
後継者の要件 | 後継者(見込みも含む)1人への承継のみが対象 | 代表権を有する複数人(最大3名)への承継も対象 |
雇用確保要件を満たせない場合 | 税制適用後5年間で平均8割以上の雇用維持が条件 | 左記の雇用要件を未達成の場合でも一定の条件で猶予継続可能 |
経営環境に応じた減免 | 後継者が自主廃業や売却を行う際
株価が下落していても承継時の株価を基に贈与・相続税を納税 |
売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、承継時の納税額との差額を減免 |
相続時精算課税の適用範囲 | 60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫が対象 | 60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者が対象 |
この特例制度の適用を受けるためには以下のような手続きや要件が必要。
1.「承継計画」を都道府県に提出する
特例事業承継税制による贈与税又は相続税の納税猶予は、原則として平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、会社が認定経営革新支援機関の指導及び助言を受けて作成した「承継計画」を都道府県に提出した場合に限って適用を受けることができる。
2.適用を受けるためには一定の要件を満たす必要がある
特例事業承継税制の適用を受けるには会社が「中小企業であること」「資産管理会社でないこと」など一定の要件を満たしている必要がある。
3.「承継計画」を提出した場合でも平成39年12月31日までに贈与しなければならない
平成39年12月31日までに非上場株式を後継者に贈与しなければ特例事業承継税制の適用権利を喪失する。
等々、まだまだ多くの要件等がありますので、ご興味がございましたら当所の担当者からご説明をさせていただきます。
税理士 廣島 清量