平成27年度税制改正において支払調書について次のような見直しが行われました。
① 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととする。
② 生命保険金等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとする。
この改正は平成27年度税制改正において見直しがされ、平成30年1月1日以後の契約者変更について適用されます。
税務署に対しては様々な情報が各所から報告される仕組みがあります。生命保険について各生命保険会社から税務署に提出される支払調書もその1つです。平成29年までは主に次のような場合に支払調書が提出されていました。
① 1回の支払金額が100万円を超える死亡保険金、満期保険金、解約返戻金等が支払われた場合
② 同一人に対して年間に20万円を超える年金給付金が支払われた場合
そして、税務署はそれらの情報を基に、納税者の申告漏れがないか確認しています。
ところが、この生命保険会社の支払調書には従来からある重大な欠陥が指摘されていました。
1)契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人でないケースで契約者が死亡して契約者名義を変更した場合、その時点での解約返戻金相当額が相続財産として相続税の課税対象となるが、保険金が支払われたわけではないため支払調書が提出されず、税務署がこれを把握することができない。
2)契約者名義を変更した後に死亡保険金、満期保険金、解約返戻金を受取った場合、本来は変更前の契約者が支払った保険料に対応する受取金は贈与税の対象となるが、支払調書は支払時点での契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更があったことを税務署が把握することができない。
1),2)の場合ともに、納税者自らが申告していない場合には税務署は契約期間中での契約者変更の事実及び贈与税や相続税の申告漏れを把握することが困難な状態でした。
こうしたことから平成27年度の税制改正で支払調書制度が見直され、平成30年1月以降の契約者変更については支払調書の対象となり税務当局による把握が可能となりました。
今回の改正は支払調書の取り扱いが変わっただけで課税範囲の拡大や増税が行われたわけではありません。もちろん税法の趣旨に則った適切な申告・納税をしなければいけませんが、申告・納税が必要であることに気づかずに漏れる事もあります。
将来の契約者変更を前提に保険加入しているようなケースも含め、平成30年1日以降に契約者変更を行う場合は、それによって課税関係がどうなるのかを事前に確認しておく必要があります。
(水田 裕之)