社会保険料の改定には、大きく分けて2つのケースがあります。1つはご存知の通り「定時決定」という毎年必ず行う手続き、もう1つは年の途中で給与等の固定的賃金の変動に伴って行われる「随時改定」という手続きです。今回は、その「随時改定」の手続きの際の計算方法に、平成30年10月から、「年間平均」が使える事となりましたのでお知らせいたします。
まず、従来の随時改定の内容について簡単におさらいしておきます。随時改定が行われるタイミングは以下の要件を全て満たした場合です。
- 昇給又は降給により固定的賃金に変動があった
- 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当などの非固定的賃金含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上である
注意点としましては、大前提として「固定的賃金の変動」があげられており、たまたま3ヶ月間の残業代が増えた(減った)等の非固定的賃金の変動により2等級以上の差が生じた場合は対象外となることです。
※固定的賃金の変動とは、基本給や日給・時給などの基礎単価・手当の増減の他、給与体系の変更などがあげられます。
「年間平均」が今回適用可能となった理由としましては、いわゆる繁忙期などの「残業代等」が増える時期と固定的賃金の変動時期が重なってしまう様な場合、高い標準報酬月額に応じた社会保険料がその後1年間適用されてしまう事になります。「報酬が高いのはその時期だけで、年間で均したらそこまで高い報酬にはならないのに・・」そういうケースでも、これまではその額で届出するしかありませんでした。それが、「事業主の申立て」と「被保険者の同意」のもとで、随時改定においても一定の要件のもとで、年間平均額を選択する事ができるようになりました。
年間平均額を選択できる具体的な要件は以下の全てを満たした場合になります。
- 現在の標準報酬月額と通常の随時改定による標準報酬月額との間に2等級以上の差がある(まず、通常の随時改定要件を満たしているか?)
- 通常の随時改定による標準報酬月額と、昇給(降給)月以降の連続した3ヶ月間に受けた固定的賃金の月平均額に、昇給以前の連続した9ヶ月及び昇給(降給)以降の連続した3ヶ月間の非固定的賃金の月平均額を加算した年間平均額から算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差がある
- 現在の標準報酬月額と年間平均額から算出した標準報酬月額との間に1等級以上の差があること
(斎藤 勝)