欧米諸国と比べ、日本の年次有給休暇の取得率の低さは、働き方改革が始まる前から長く問題視されていました。(正社員の約16%が、年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない従業員については長時間従業員の比率が高いという事態)このことを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進むような仕組みを導入することが適当であるとされ、今回の労基法の改正に至りました。
◆対象者
年10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員
(比例付与の従業員については、今年度付与される年休の日数が10日以上の者。繰越分は含めません。)
◆改正により
すべての会社で、年間の有給休暇消化日数が5日未満の従業員については、会社が有給休暇を取得するべき日を指定することが義務付けられました。また、「年次有給休暇管理簿」を作成し、従業員ごとに年次有給休暇の取得日数等を記載する必要があります。
年5日の年休を取得させなかった場合、30万円以下の罰金となります。
◆会社としての対応は
①個別指定方式(社内で有給消化年5日以上の従業員が多数を占める場合におすすめ)
従業員ごとに消化日数が5日以上になっているかをチェックし、5日未満になってしまいそうな従業員について、会社が有給休暇取得日を指定する方法
就業規則で、「基準日から1年間の期間が終わる1か月前までに有給休暇が5日未満の従業員について会社が有給休暇を指定する」ことを定めて、実行していくことが考えられますが、従業員ごとに有給休暇の消化日数を管理したうえで、基準日から1年間の期間の終了日が近づいてきたタイミングで、有給休暇を会社側から指定することを忘れないようにする必要があります。
②計画的付与(社内で有給消化年5日未満の従業員が多数を占める場合におすすめ)
会社が従業員代表との労使協定により、各従業員の有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ日にちを決めてしまうことができる制度です。
計画年休制度で年5日以上の有給休暇を付与すれば、対象従業員について5日以上は有給を消化させていることになるため、今回の法改正による有給休暇取得日の指定義務の対象外になります。個別の管理は必要なくなりますが、労使協定が必要で、会社の都合で日にちを変更することはできません。
社会保険労務士 神山 真由美