2019年度税制改正大綱により従来制度(2016年6月8日号Vol.571参照)に加え、空き家の発生を抑制する目的で相続により発生した空き家の売却による3000万円特別控除に関して要件が緩和された上で適用期限が延長されています。この制度の適用を受けるには、被相続人が相続の開始直前において居住していたことが要件でしたが、今回の改正により老人ホーム等に入居していた場合も対象に加えることとなりました。
- 改正内容
①被相続人は介護保険法に規定する介護要件認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。
②被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始の直前まで、被相続人の居住用家屋について、その本人による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付の用、被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
③適用期限を4年間延長する。
④上記の改正の適用時期は、2019年4月1日から2023年12月31日までに行う売却とする。
- 従来制度の適用要件の主な適用要件
①相続の開始があった時から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却すること。
②1981年(昭和56年)5月31日に以前に建築された家屋(マンション等区分所有建物を除く)であること。
③相続の開始の時から売却の時まで、あるいは、家屋の取り壊し時まで事業の用、貸付の用、居住用に利用していないこと。また家屋の取り壊し後から売却の時まで建物等の敷地に利用されていないこと。
④売却代金が1億円以下であること。
なお、被相続人の家屋が、相続人所有の家屋・土地等と一体となっている場合は、相続人所有分も含めた金額で判断します。
実家を相続して空き家となる見込みの場合、売却処分をご検討の方は、適用要件に合致さえすれば最大約600万円(3,000万円×20.42%)の節税となりますので、特別控除の適用可否の確認をお勧めいたします。相続税法上の小規模宅地等の特例を受けた土地等であっても二重に特例措置を利用しているような印象を受けるかもしれませんが、適用対象となります。相続開始後はどうしても相続税対策に思考が向きがちですが、こちらも所得税対策として有効な特例措置・制度となっております。
税理士 久保 康高