会社の決算申告が無事に終わり、後日決算書の内容についてご説明している中でよく社長から質問される事があります。経営者であれば今までに1度くらいは疑問に感じた経験があるかもしれませんが、それは「資金繰りが厳しいのになぜ黒字になっているのか?」もしくはその逆で「現預金に余裕があるのに赤字なの?」といった質問です。
今回は、改めて利益とお金の関係について、なぜこのような状況になるのか?主な原因をお伝えしていきたいと思います。
4つの主なズレの原因
その1 掛取引や手形取引による入金・出金までのタイムラグによるズレ
商品の納品、サービスの提供などにより売上が確定し、損益計算上は売上として利益を構成していても、その代金が期末で未収となっているなどの理由により現金化されていない。このズレについては社長も日々認識されていらっしゃる事が多いです。
その2 在庫の増加によるズレ
期中に販売目的で商品を仕入れても、期末時点で販売がされていなければそれは費用ではなく、在庫として資産になる。費用ではないので利益は減らないが、仕入時に現金の支出は伴う
その3 設備投資による費用化と支出のタイミングによるズレ
建物や設備、機械や車両といった固定資産は、税制の特例を適用する場合になどを除き、購入時にその全額が費用にならないため、購入時の支出額と費用(減価償却費)とが一致しない。
その4 財務取引による損益計算外でのお金の出入りによるズレ
代表的なもので言えば、金融機関等からの融資による入金や、返済による支出。借入金は売上でも費用でもなく負債であるため利益計算とは一切無関係だが、お金の増減には影響する。
会社の損益計算では上記のようなズレの原因が日々繰り返される継続的な取引の流れの中で、決算という決められた時点で、無理やり期間を区切って帳簿を締め切るため、収益と入金、費用と支出が一致していない事がほとんどです。手元の現預金の残高だけを見て、「儲かっている」・「儲かっていない」という誤った判断をしてしまうと、あるときに突然資金がショートするなどの事態に遭遇する危険性があります。今、手元にあるお金の源泉は、会社の利益からもたらされているものでしょうか?それとも銀行からの融資によるお金でしょうか?存在している現預金の発生原因を正しく認識する事は、資金繰りを考える上では非常に重要な要素になると言えるのではないでしょうか。
(斎藤 勝)