労働基準法が改正され、中小企業は来年の4月から「時間外労働の上限規制」が適用されることはご承知の通りです(大企業は今年の4月から施行されています)。
時間外労働の上限規制は、時間外労働の限度時間を原則月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)とする規制であり、企業はこれまで以上に従業員の労働時間の適正な把握・管理が求められることになります。
そのような中、厚生労働省から、リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」が公表されました(10月17日)。これは、労働基準監督署への問合せが多い「『研修・教育訓練/仮眠・待機時間/労働時間の前後の時間/直行直帰・出張に伴う移動時間が労働時間に該当するか否か」について、実際の相談事例をもとに解説したもので、労働時間の適正な管理に役立ててほしいとしています。その内容についてみていきます。
◆そもそも「労働時間」とは?
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。
◆研修・教育訓練の取扱いは?
業務上義務付けられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。例えば、参加の強制はしていない。また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会などです。
◆仮眠・待機時間の取扱いは?
仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。例えば、週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間などです。
◆更衣時間の取扱いは?
制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません。
◆早出時間の取扱いは?
交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しません。
◆直行直帰・出張に伴う移動時間は?
移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。
社会保険労務士 神山 真由美